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トロイア戦争のあらすじ解説!本当にあった?史実や映画との相違点
トロイア戦争とは、古代ギリシャのミケーネやスパルタなどによるギリシャ王国連合とトロイア王国との間で起こった戦争の事です。トロイア戦争はホメロスの叙事詩である「イリアス」で語られており、長い間神話であると考えられていました。しかし、考古学者シュリーマンによるトロイ遺跡発掘によって、実際に戦争の痕跡が出てきたため、全く架空の物語ではなくある程度事実に基づいていると考えられています。
トロイア戦争に登場する英雄や神々などのキャラクターは魅力的で、今まで多くの小説や映画などの題材となりました。2004年に公開されて日本でも大ヒットとなったブラッド・ピット主演の「TROY」はトロイア戦争を元にしたエンターテイメント作品となっています。
トロイの木馬は多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか?皆さまが読まれた本や観た映画によって、印象に残っている登場人物やエピソードは様々かと思います。イリアスで語られたトロイア戦争のあらすじをご紹介させていただきますので、皆様の知っているお話と比較してお楽しみください。
トロイア戦争はホメロスの叙事詩『イーリアス』で語られていることで有名ですが、イーリアスは最強の英雄アキレウスを主役とした物語なので、トロイア戦争でアキレウスが死亡する直前までしか語られません。
有名なトロイの木馬のエピソードや戦争の終結については、トロイア戦争で生き残ったギリシャ軍のオデュッセウスが、さまざまな苦難を乗り越えて故郷に帰り着くまでの旅路を描いた『オデュッセイア』で語られています。
これは叙事詩イリアスで語られている戦争の概要ですが、現代の歴史検証によるとトロイア戦争とみられる戦争は、実際に紀元前12~11世紀頃に起こった可能性があると考えられています。
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全知全能の至上神ゼウスは自らの不貞により正妻ヘーラー以外の妻との間に多くの子供がいました。その結果、地球上に人がたくさん増えたため、秩序の神テミスに相談して、戦争を起こして人口を減らすことを考えつきました。また、ゼウスの家系は代々、子供が親を倒すことで権力を奪ってきたという経緯があり、ゼウスも自らの子供に自分が倒されることを恐れていました。そこで半神半人の英雄である子供たちや子孫を戦争に巻き込み、殺してしまおうと策略を立てました。
また、戦争を起こす両軍の戦力をより均衡化させるためにゼウスは、今回の戦いで活躍する英雄が新たに1人必要だと考えていました。そこで勇猛な人間であるペーレウスとティターン族の女神ティティスを結婚させ、子供を産ませて戦いに参戦させることを思いつきます。
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ゼウスの策略通り、ペーレウスとティティスの結婚式が開かれ、全ての神々が招待されました。しかし、争いの神エリスだけはゼウスの指示により入り口のドアの前で止められ入ることが出来ませんでした。そのためエリスは「最も美しい女神へ」と書かれた黄金のリンゴをドアから投げ入れました。そのリンゴを見てヘーラー、アテーナー、アフロディーテの3女神たちが、最も美しいのは自分のことであるとそれぞれ主張しましたが、他の神々たちは意見することが出来ませんでした。
そこでゼウスの指示により3女神をトロイア王国の王子パリスの前に連れて行き、パリスに誰が一番美しいかを決めさせることにしました。決めかねていたパリスに対し、自分を選んでくれた見返りとして、アテーナーは強い戦闘能力と知識、ヘーラーは優れた政治力とアナトリア地方の支配、アフロディーテは最も美しい人間であるヘレネーの愛を与えることを提案しました。その提案を受けてパリスはアフロディーテを選びました。この出来事は「パリスの審判」と呼ばれています。
パリスはアフロディーテに黄金のリンゴを渡し、それと引き換えにアフロディーテはスパルタのメネラーオス王の妻であるヘレネーがパリスに恋をするようにキューピットの矢で射貫きました。そしてパリスはトロイアの王子としてスパルタを訪問し、出会った2人は恋仲となり、パリスはメネラーオス王がスパルタに不在の間にヘレネ―をスパルタから連れてトロイアに戻りました。
妻を奪われたメネラーオス王は、武将オデュッセウスや部下と一緒にトロイアに行き、ヘレネーを返すように強く交渉を行いましたが失敗し、ヘレネーを取り戻すことが出来ませんでした。そこでメネラーオス王は自分の兄でミケーネ王国の王であるアガメムノーンに相談し、オデュッセウスの誓いを元にアカイア人の連合軍を組織しトロイアに攻め入ることを決心しました。
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最も美しい人間であるヘレネーには求婚者が後を絶たず、父親であるスパルタ前王のテュンダレオースは結婚相手に誰を選んでも争いになることを懸念していました。そこで武将オデュッセウスが、求婚者全員に「誰が選ばれるにせよ、選ばれた男が困難に直面した場合は、その男を皆で力を合わせて助ける」と誓わせ、争いが起きないようにしました。
オデュッセウスの誓いの通りかつてヘレネーに求婚したギリシャ内の各国の王子たちが軍勢を引き連れてアウリスという港町に集結しました。アカイア人(ギリシャ人)の遠征軍は、武力に優れているミケーネ王アガメムノーンが総大将となり、ヘレネーを奪われた知力に優れているメネラーオスが副大将となりました。トロイア王国へ攻め入る際に、約1200隻の大艦隊を編成し、7万人から13万人のアカイア人が参加したと言われています。
大艦隊はエーゲ海を渡り、ダーダネルス海峡を進み、浜辺に到着しました。しかし、ギリシャ軍の預言者カルカースが、最初にトロイアの地を踏んだ者は戦死すると予言したため、皆が船から降りるのを躊躇していました。
そこでギリシャ軍のオデュッセウスが、自分の盾を地面に投げて、船から降り盾の上に降り立ちました。それを見たギリシャ軍の武将プローテシラーオスが船から飛び降りました。オデュッセウスはトロイアの地面を踏んでいないため、プローテシラーオスが最初にトロイアの地を踏んだこととなりました。
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浜辺で待ち構えていたトロイア軍とギリシャ軍が戦闘となり、数で劣るトロイア軍をプローテシラーオスなどが次々に撃破していきましたが、その前にトロイア軍の総大将ヘクトールが立ちはだかりました。プローテシラーオスが一騎打ちで戦いましたが、預言の通りプローテシラーオスはヘクトールに討ち取られ、トロイア戦争で最初のギリシャ軍の犠牲者となりました。
しかし、ギリシャ軍の英雄アキレウスなどの活躍もあり、ギリシャ軍が優勢のまま戦闘が続き、トロイア軍は浜辺から後退を余儀なくされ、堅牢な城壁を持つトロイア城内へと撤退していきました。
長引く戦争により食料や資金不足になったギリシャ軍の兵士からは不満が起こり、故郷に返すように要求が強くなっていきました。また、部下が上官に反乱を起こすことも度々発生しました。そして戦いは10年目に入り、終結に向けて大きく動いて行きます。
英雄アキレウスを主人公としたホメロスの叙事詩『イーリアス』は、トロイア戦争開始から10年目にアキレウスが激怒した出来事から始まります。
アキレウスは戦いで陥落させた都市で、ブリーセーイスという優秀な女性を捕虜として連れ帰りました。ギリシャ軍総大将のアガメムノーンもクリューセーイスという女性を気に入り捕虜として自分の側に置いていました。ある日クリューセーイスの父親の神官クリュセスより娘を返してほしいと言われましたが、アガメムノーンは全く取り合わずに申し出を拒否しました。
悲観した神官クリュセスは太陽神アポローンに祈り、アポローンの力によりギリシャ軍の兵士に伝染病が蔓延しました。そのためアキレスや他の武将から伝染病を抑えこむため神官クリュセスの依頼を聞き入れるように強い要望があり、アガメムノーンはクリューセーイスを返す約束しますが、代わりにアキレウスにブリーセーイスをもらうと言いました。そしてアキレウスは強引にブリーセーイスをアガメムノーンに奪われてしまいました。
これまでもアガメムノーンの傲慢な態度を良く思っていなかったアキレウスはこの件で激怒し、戦場に出ることをやめ、強大な英雄を欠いたギリシャ軍は不利に陥ってしまいました。
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アキレウスの離脱を受けて、一緒に参戦していたアキレウスの親友パトロクロスが、アキレウスに出陣の説得を強く行いましたが、アキレウスは首を縦に振りませんでした。そこで、パトロクロスはアキレウスの武具と軍隊を借り、ギリシャ軍を救うために出撃しました。
アキレウスの武具を見たトロイア兵はアキレウスが出陣してきたと思い動揺し、逆にギリシャ兵は士気が一気に上がりました。一時はギリシャ軍の船に火をつけ、ギリシャ軍を撤退に追い込む寸前だったトロイア軍の武将をパトロクロスは次々と撃破し、トロイアの城壁まで後退させました。
パトロクロスはトロイア城壁への攻撃を続けましたが、城壁を守っている太陽神アポローンに防がれ勢いを失って行きました。そして満身創痍となったパトロクロスは、トロイア軍の総大将のヘクトールによって討ち取られ、アキレウスの武具を奪われてしまいました。親友パトロクロスの死を知ったアキレウスは深く嘆き悲しみ、ヘクトールへ復讐することを誓います。
アキレウスは炎と鍛冶の神であるヘーパイストスより新しい武具を受け取り、戦場に戻りました。アキレウスが出撃し、ほとんどのトロイア兵は城壁の中に逃げ帰りましたが、戦と知恵の神アテーナーがトロイア軍の総大将のヘクトールの弟であるデーイポボスに姿を変え、ヘクトールに助言しました。
アテーナーが変身した自分の弟から「二人で一緒にアキレスと戦おう」と言われたヘクトールは、城門の中に入らず、アキレウスを迎え撃つことを決断します。
しかし、アキレウスが戦いを挑んで来たときにはデーイポボスは姿を消しており、1対1で決闘を行うことになってしまいました。さらにヘクトールはパトロクロスより奪ったアキレウスの武具を着ていたことにより、武具の弱点を知っているアキレウスに弱点の首元を攻撃され、倒されてしまいました。
復讐を成し遂げたアキレウスはパトロクロスの魂を慰めるために競技大会を開き、ヘクトールの遺体は父親のプリアモス王の懇願を聞き入れトロイアに返されました。パトロクロスとヘクトールの死を弔うために11日間の休戦協定が結ばれました。ホメロスのイリアスではトロイア戦争のここまでの物語が語られています。
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パトロクロスとヘクトールの葬儀が終わった後、アマゾネスの女王ペンテシレイアがトロイア軍に加わり、ギリシャ軍に対して猛攻撃を仕掛けていきます。しかし、アキレウスが出撃し、ペンテシレイアを倒しました。その後、プリアモス王の義兄弟であるメムノーンがエチオピア軍を率いてトロイア軍に参加しましたが、アキレウスはこれも撃退します。
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アキレウスによって、ゼウスの子孫たちが多く倒されることとなり、ゼウスの意図通り十分に活躍したアキレウスに対して死が与えられることになってしまいました。
メムノーンを倒して勢いに乗ったアキレウスはトロイア城門前まで敵を深追いし、獅子奮迅の活躍していましたが、そこでアポローンの助けを受けたトロイア王子パリスが放った毒矢がアキレウスに命中し、その傷が原因となりアキレウスは絶命してしまいます。ちなみにパリスの放った矢はアキレウスのかかと部分に命中し、無敵の英雄アキレウスの唯一の弱点であるかかと部分はアキレス腱と呼ばれるようになりました。
アキレウスの遺体はトロイア軍とギリシャ軍双方が奪い合いましたが、ギリシャ軍のオデュッセウスと大アイアスが回収し、ギリシャ陣営に持ち帰り、アキレウスの葬式としての競技大会が開催されました。
競技大会の勝者はアキレウスの武具を与えられることになり、オデュッセウスが勝ち、アキレウスの武具を手に入れました。敗れた大アイアスは怒りにより正気を保つことが出来なくなり、自分の剣に身を投げて自殺してしまいます。
ヘクトールとアキレウスという両軍の英雄が亡くなり、トロイア戦争は再び膠着状態となってしまいました。そこでトロイアを陥落させるにはヘラクレスの弓が必要という予言を聞いたオデュッセウスは、レムノス島にいるピロクテーテースを迎えに行き、ピロクテーテースをヘラクレスの弓と共にギリシャ陣営に連れてくることに成功しました。
弓の名手であるピロクテーテースは出陣するとアキレウスの仇であるパリスを弓で射って、重傷を負わせました。そして重傷を負ったパリスは回復せずに亡くなってしまいました。亡くなったことで、パリスの妻であったヘレネーを巡って、パリスの兄弟であるヘレノスとデーイポボスが争いを繰り広げました。父であるトロイア王のプリアモスがデーイポボスをヘレネーの夫として選び、ヘレノスは失意のままイーデー山に送られることになりました。
オデュッセウスは預言者カルカースよりヘレノスがトロイアを陥落させるための預言を知っていると伝えられたため、イーデー山に向かいヘレノスを捕らえました。そしてオデュッセウスがヘレノスを問い詰めたところ、自分の父や兄弟に対して怒っていたヘレノスは3つの予言を教えました。
豊穣の女神であるデーメーテールが食べたとされるペロプスの肩の骨は、ギリシャ兵の捜索により無事見つけ出すことが出来ました。ネオプトレモスはオデュッセウスが迎えに行き、父親のアキレウスの武具を譲り受けギリシャ軍に参加することになりました。
また、オデュッセウスは物乞いに変装してトロイアに侵入し、アテーナーの木像を盗みだすことに成功しました。これでヘレノスが予言したトロイア王国陥落の条件が揃うことになりました。
トロイア戦争を終結させるためにオデュッセウスは最後の作戦を考え出しました。これがよく知られているトロイの木馬です。トロイア王国で神聖な動物として崇められている馬を木で作り、アテーナーの指導により巨大な木馬を完成させました。木馬には「ギリシャ軍が無事に故郷に帰れるようにアテーナーに感謝の気持ちを込めて捧げる」と刻み込みました。
木馬にはオデュッセウス率いる少数の精鋭が乗り込み、梯子を外して出入り口に蓋をし、ギリシャ軍は野営地を焼き払い近くのテネドス島まで撤退しました。トロイア兵はギリシャ軍がいなくなっている状況を見て、ついにギリシャ軍が撤退したと喜びました。残されていた木馬に関して、燃やしてしまう案、落として岩に叩きつけて壊す案、トロイアに持ち帰りアテネに捧げる案が出ました。
神官ラオコーンと王女カッサンドラはギリシャ軍の作戦だと感じ木馬を持ち帰ることに反対しましたが、ラオコーンは海から現れた毒蛇に咬まれて死んでしまい、カッサンドラはアポローンによって予言の力を授けられていましたが、同時に誰もその予言を信じないという呪いもかけられていたためカッサンドラの言葉に従う者はいませんでした。
トロイア兵たちは木馬を持ち帰ることを決め、木馬を城内に引き入れて、勝利を祝う宴会を行いました。そして深夜になったころにギリシャ兵のスパイがテネドス島で待機していた艦隊に合図をし、木馬からはオデュッセウスらが出てきて城門守衛の兵士を倒しました。
城門が開け放たれ大勢のギリシャ兵がトロイアに入り込み、宴が終わって油断して寝ていたトロイア兵を次々と倒していきました。ゼウス神殿に隠れていたプリアモス王は、アキレウスの息子ネオプトレモスによって討たれ、ヘネレーを奪われたメネラーオスがヘレネーを妻としたデーイポボスを倒しました。
こうして一晩の内に城と街は焼き尽くされほとんどのトロイア人は殺されてしまい、ギリシャ軍の大勝利によりトロイア王国は滅亡しました。この戦争によってゼウスの策略通り多くの英雄や人間が亡くなり、勝利したギリシャ軍の英雄たちも悲劇的な結末を迎えることになります。
しかし、映画「トロイ」の内容はホメロスの叙事詩や史実といくつかの相違点があります。
映画では、アポロンとポセイドンは少しだけ出てきますが、基本は人間ドラマとして描かれており、神話において神々が関わる部分も置き換えられています。ホメロスの叙事詩との違いに対しては賛否両論ありますが、そもそも『イーリアス』やトロイア戦争自体、史実として検証が不十分であるため、映画「トロイ」もあくまでトロイア戦争をモチーフとしたフィクションとして楽しみましょう。
物語の舞台となったトロイア王国はイリオスとも呼ばれています。現在のトルコ北西部に位置し、ダーダネルス海峡の南にあります。数多くのギリシャ神話に登場する伝説上の都市でしたが、考古学者シュリーマンによる発見と、その後の考古学の研究により紀元前1300年~1190年ごろに存在したと言われています。
実際、トロイア王国と同時代に栄えたヒッタイト帝国のボアズキョイ遺跡から出土した文書に、アカイア人やイリオス、アレクサンドロス(トロイア王子パリスの別名)といった名前が記されていることが確認されています。
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トロイアは城壁に囲まれた城塞都市で、城内には高い塔が建ち、都市機構が発達していました。また王子パリスがスパルタに向かった際には豪華絢爛な船を建造するほど財力があったと言われています。
トロイア王国の城壁は、トロイア王国の王プリアモスの父であるラーオメドーンが海と地震の神ポセイドンと太陽の神アポローンに命じて作らせたと言われており、非常に強固で正面突破で攻略するのは困難でした。なお、この時にラーオメドーンがポセイドンとアポローンに城壁の報酬を支払わなかったため、疫病と海の怪物によって苦しめられることになりました。
最後の王となったプリアモスには多くの子供たちがおり、ヘクトール、パリス、デーイポボス、カッサンドラなどがイリアスに登場します。しかしプリアモス王や子供たちは全員殺されてしまいトロイア王国は滅亡してしまいました。
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トロイア王国に攻め込んだギリシャ連合軍の総大将を務めたアガメムノーンが治める国がミケーネ王国です。現在のギリシャのペネポネソス半島北部に位置し、考古学者シュリーマンによって遺跡が発掘されました。
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地中海交易により繫栄し「黄金に富むミケーネ」と呼ばれており、実際に発掘により多くの黄金の副葬品が発見されています。ミケーネからは陶芸品やワインが主に輸出され、金やガラスなどを他の地域から輸入していました。また貿易協定を結ぶことで、他国の人々を傭兵として雇い軍事力も強化していきました。
国は紀元前1500年頃から発展を遂げ、地中海の島々を含む周辺国を支配しました。ミケーネ王は強い権力を持っており、支配した周辺諸国や村々より税や農作物などを納めさせていました。ミケーネ王国では線文字Bと呼ばれる文字を持ち、優れた青銅器の技術を持っていました。また、外敵から国を守るために巨大な石を用いた城壁が発掘されています。
ギリシャ連合軍の主力としてトロイア戦争に参戦し勝利しましたが、そのすぐ後に異民族の侵攻を受けて滅んだと言われています。栄えたミケーネ文明が急に滅亡し、アテネで都市国家が成立されるまでの間は歴史的な史料が少ないため暗黒時代と呼ばれています。
パリスの審判の舞台になった結婚式において結婚した勇猛な人間であるペーレウスとティターン族の女神ティティスの息子です。足が速く武力に非常に優れていたため、トロイア軍の敵将を多く討ち取り、ギリシャ軍の形勢を優位に導きました。しかし自身が参戦しない時はトロイア軍に形勢を逆転されてしまうほど、戦争の行方を左右するほどの絶対的な力を持っていました。
母であるティティスは、アキレウスがトロイアへの遠征に参加すれば息子が死んでしまうことを予知していたため、アキレウスに女装をさせ、スキューロス島の王の元に送りました。この時、王の娘と恋に落ち授かった子供が息子のネオプトレモスです。スキューロス島で隠れて暮らしていましたが、アキレウスを探しに来たオデュッセウスにより、変装を見抜かれてトロイア戦争に参加することになりました。
アキレスは父ペーレウスが統治していたミュルミドーン人で編成された50隻の船と共にトロイアに向かい、トロイア周辺の12都市を攻め落としました。また、トロイア軍の総大将のヘクトールを一騎討ちで倒すなど多くの功績をあげました。勇猛果敢で時には冷酷な性格ですが、ヘクトールの遺体を返してくれるように懇願してきたプリアモス王に同情し、遺体を返すなどの優しい一面もあります。
アキレウスは生まれた時に不死身の体になるように母ティティスによって冥界の川に全身を浸けられました。しかしティティスはアキレウスの足首を掴んでいたため、足首だけは不死身にならず、後にパリスの矢を足首に受けて絶命してしまいます。アキレウスはトロイア戦争の終盤まで戦い続けましたが、結局トロイア城の落城を見届けることは出来ませんでした。
オデュッセウスはイタケーという小さな島国の王子で、力で戦う武将ではなく、策略や知力を駆使する知将です。トロイア戦争ではアキレウスと共に多くの活躍が描かれており、イリアスの中では2大英雄として知られています。
オデュッセウスはヘレネーに求婚した婚約者の一人でした。選ばれた際に多くの敵が出ることを懸念して、「オデュッセウスの誓い」を結ばせましたが、結局オデュッセウスはヘレネーの夫として選ばれませんでした。しかし円滑にヘレネーの求婚者を決められた功績を認められ、ペネロペイアという女性と結婚することが出来ました。
オデュッセウスは、トロイア戦争に参加した場合は長期間故郷に戻ることが出来ないと言う予言を受けていたため、トロイア戦争への参加は否定的でした。しかし自ら提案した「オデュッセウスの誓い」により、参加せざるをえない状況となりました。そこで自分の精神が不安定である演技しましたが、見抜かれてしまい結局トロイアに向かうことになりました。
オデュッセウスその知力でギリシャ軍を助け、トロイの木馬作戦を考案し、トロイア戦争を終結に導きました。しかし予言の通り、故郷への帰路で様々な困難が待ち受けることになり、一緒に旅をした部下を全員失い、20年の歳月をかけてようやく故郷のイタケーに戻ることが出来ました。この物語はホメロスのオデュッセイアで語られています。
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トロイア出征時に逆風が吹いて船を出せなくなると、預言を受けて自分の娘を女神アルテミスへ生贄として捧げました。このことで妻であるクリュタイムネストラとの間で確執が生まれることになりました。
トロイア戦争に勝利後、プリアモス王の娘カッサンドラを連れてミケーネ王国に戻りましたが、ミケーネ到着後に妻のクリュタイムネストラと愛人によって、カッサンドラと共に暗殺されてしまいました。カッサンドラはミケーネに戻らないように預言していましたが、この言葉はアガメムノーンには届きませんでした。
政治力や知力が高いスパルタの王です。多くのヘレネーの求婚者の中から選ばれ、ヘレネーと結婚してスパルタ王の座を引き継ぎました。トロイア戦争にはヘレネーを奪ったパリスへの復讐のため兄のアガメムノーンと参戦し、多くの手柄を立てました。
戦いの初期にギリシャ軍とトロイア軍が対峙した際にパリスが出陣してきたため、メネラーオスが一騎打ちを挑みました。一騎打ちは優勢でしたが途中で邪魔が入り、パリスを討ち取ることは出来ませんでした。
トロイア陥落時はトロイの木馬に乗り込み、パリスの弟のデーイポボスを討ち取り、メネラーオスはヘレネーも殺そうとしましたが、結局殺すことが出来ずに自分の船に連れ帰りました。スパルタへの帰路で暴風雨に合い、エジプトに流れ着き、8年の歳月を経たのち帰国することが出来ました。スパルタではヘレネーと共に国を統治し幸せに暮らしました。
親友を殺されて怒ったアキレウスが出陣し、仇であるヘクトールを倒しました。その後、パトロクロスの遺体は火葬され、葬儀のための競技会が行われました。また、彼の遺灰はアキレウスが亡くなった後に、彼の希望通りアキレウスの遺灰と一緒に埋葬されたと言われています。
アキレウスの葬儀のための競技会が行われ、勝者にはアキレウスの武具が与えられることになり、大アイアスは参加しましたが、知力に長けたオデュッセウスに負けてしまいました。その結果に激怒した大アイアスは、オデュッセウスや味方の武将を殺そうと、彼らの船団に向かいました。しかし女神アテーナーが大アイアスの気を狂わせ、羊を武将に見えるようにしました。そして羊たちを切り殺した後に正気を取り戻しました。
正気を取り戻し、死んだ羊たちが横たわっている光景を見た大アイアスは自分自身に失望し、自らの剣に身を投げて自殺してしまいました。
パリスはトロイア王プリアモスと王妃ヘカベーの間に生まれた王子です。アレクサンドロスと名付けられましたが、預言者が「将来この子がトロイを滅ぼす」と伝えたため、王は大きな葛藤の中で子供を殺すように命じましたが、哀れに思った家来が殺さずに逃がしました。
パリスと名前を変え、イーダー山で牛飼いとして暮らしていましたが、ゼウスの名を受けた使者の神ヘルメスが3女神をパリスの前に連れて行き、そこで最も美しい女神を選ぶ審判を行いました。
パリスの審判の後に、トロイアで競技会が行われることを聞き、優勝の景品が自分で愛情を込めて育ててきた牛だったため、自分が優勝して牛を取り返すために競技大会に参加を決意しました。そして無事に競技大会で優勝を果たし、王と王妃の前でパリスはトロイア王国の王子であることが明かされました。予言に従い殺してしまったと思っていた王子が目の前に現れたため王と王妃は大喜びし、王子として宮殿に迎え入れました。
その後、アフロディーテの助言の通りスパルタにトロイアの王子として向かい、ヘレネーをトロイアに連れて帰りました。この事がきっかけとなりトロイア戦争が始まり、預言の通りパリスが原因でトロイア王国が滅亡してしまうこととなります。最後はギリシャ軍の武将ピロクテーテースに弓で射られて亡くなってしまいました。
勇猛果敢で常に前線に立って戦い、アキレスが離脱している間はギリシャ軍を海岸まで後退させ、アキレスの親友パトロクロスを討ち取りました。しかし、友人の死で奮起したアキレスとの一騎打ちで殺されてしまいました。遺体はアキレスによって戦車に結ばれて、引き回されましたが、神の祝福を受けていたため遺体に損傷はなく、傷1つない状態でプリアモス王に引き渡され、手厚く葬られました。
スパルタ王テュンダレオースと王妃レーダーの娘として生まれたと言われていますが、一説にはゼウスが白鳥に姿を変えて王妃レーダーと交わり、産ませた子供とも言われています。絶世の美女で、結婚の話が出た時はギリシャ全土から求婚者がスパルタにやってきました。スパルタとトロイアの間で人生を翻弄され、トロイア陥落の際は、元夫のメネラーオスが剣を胸に突き立て殺そうとしますが、ヘレネーのあまりの美しさに剣を落としました。
トロイア戦争後はスパルタでメネラーオスと平穏に暮らしました。
トロイア戦争には多くの神がギリシャ軍とトロイア軍をそれぞれ支援する形で参戦しています。イリアスでは神々は時に人間以上に人間らしく描かれ、神話上の神々をより身近に感じることが出来ます。トロイア戦争に参加した神々を簡単にご紹介させていただきます。
トロイア戦争に登場する英雄や神々などのキャラクターは魅力的で、今まで多くの小説や映画などの題材となりました。2004年に公開されて日本でも大ヒットとなったブラッド・ピット主演の「TROY」はトロイア戦争を元にしたエンターテイメント作品となっています。
トロイの木馬は多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか?皆さまが読まれた本や観た映画によって、印象に残っている登場人物やエピソードは様々かと思います。イリアスで語られたトロイア戦争のあらすじをご紹介させていただきますので、皆様の知っているお話と比較してお楽しみください。
目次
トロイア戦争のあらすじを簡単に!いつ・どこで・何が起こった?
時期 | 紀元前1260年~紀元前1180年 |
場所 | トロイア王国(現在のトルコ北西部、ダーダネルス海峡の南あたり) |
内容 | ギリシャ王国連合とトロイア王国の間で起こった10年にわたる戦争 |
どっちが勝った? | ギリシャ軍が勝利したが、両軍大勢の英雄が戦死した |
出典 | ホメロスの叙事詩『イーリアス』および『オデュッセウス』 |
- トロイア戦争は、地上で増えすぎた人口を減らすために全知全能の神ゼウスが企てた計略。
- トロイア王国で戦争を起こして英雄たちを殺し合わせるために、戦争の原因となった絶世の美女ヘレネと、戦時に最も活躍した最強の英雄アキレウスを産みだす。
- スパルタのメネラーオス王の妻であるヘレネが、トロイアの王子パリスに恋をするように仕向ける。
- 妻ヘレネをパリスに奪われたメネラーオス王が兄であるミケーネ王国のアガメムノーンに相談し、オデュッセウスの誓いをもとにアカイア人の連合軍を組織してトロイアに侵攻。
- 数に勝るギリシャ軍はアキレウスをはじめとする英雄の活躍で優位に立つが、難攻不落のトロイアの城塞を破れずに戦況は9年にわたって膠着状態が続く。
- ギリシャ軍の知将オデュッセウスが巨大な木馬に兵を忍ばせてトロイア城内に運び込ませることに成功し、夜になって木馬から出たギリシャ兵によってトロイアは滅亡。
- 両軍ともに多くの英雄が死亡し、生き残ったギリシャ軍の英雄たちも後に悲劇的な結末を迎えるなど、ゼウスの策略通りの結果に終わる。
トロイア戦争はホメロスの叙事詩『イーリアス』で語られていることで有名ですが、イーリアスは最強の英雄アキレウスを主役とした物語なので、トロイア戦争でアキレウスが死亡する直前までしか語られません。
有名なトロイの木馬のエピソードや戦争の終結については、トロイア戦争で生き残ったギリシャ軍のオデュッセウスが、さまざまな苦難を乗り越えて故郷に帰り着くまでの旅路を描いた『オデュッセイア』で語られています。
叙事詩イリアスで語られるトロイア戦争とは?発生から決着まで徹底解説
ギリシャのエーゲ海沿岸のペロポネソス半島で文明を築いていたアカイア人(ギリシャ人)を中心とする勢力が、小アジアのトロイア王国に攻め込み戦争となりました。アカイア人によるギリシャ連合軍は10万人以上で大船団を編成し、エーゲ海を渡り、ダーダネルス海峡から上陸を行い、両軍が激突しました。これは叙事詩イリアスで語られている戦争の概要ですが、現代の歴史検証によるとトロイア戦争とみられる戦争は、実際に紀元前12~11世紀頃に起こった可能性があると考えられています。
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トロイア戦争の背景|ゼウスの策略
全知全能の至上神ゼウスは自らの不貞により正妻ヘーラー以外の妻との間に多くの子供がいました。その結果、地球上に人がたくさん増えたため、秩序の神テミスに相談して、戦争を起こして人口を減らすことを考えつきました。また、ゼウスの家系は代々、子供が親を倒すことで権力を奪ってきたという経緯があり、ゼウスも自らの子供に自分が倒されることを恐れていました。そこで半神半人の英雄である子供たちや子孫を戦争に巻き込み、殺してしまおうと策略を立てました。
また、戦争を起こす両軍の戦力をより均衡化させるためにゼウスは、今回の戦いで活躍する英雄が新たに1人必要だと考えていました。そこで勇猛な人間であるペーレウスとティターン族の女神ティティスを結婚させ、子供を産ませて戦いに参戦させることを思いつきます。
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トロイア戦争の原因|トロイア王子パリスの利用
ゼウスの策略通り、ペーレウスとティティスの結婚式が開かれ、全ての神々が招待されました。しかし、争いの神エリスだけはゼウスの指示により入り口のドアの前で止められ入ることが出来ませんでした。そのためエリスは「最も美しい女神へ」と書かれた黄金のリンゴをドアから投げ入れました。そのリンゴを見てヘーラー、アテーナー、アフロディーテの3女神たちが、最も美しいのは自分のことであるとそれぞれ主張しましたが、他の神々たちは意見することが出来ませんでした。
そこでゼウスの指示により3女神をトロイア王国の王子パリスの前に連れて行き、パリスに誰が一番美しいかを決めさせることにしました。決めかねていたパリスに対し、自分を選んでくれた見返りとして、アテーナーは強い戦闘能力と知識、ヘーラーは優れた政治力とアナトリア地方の支配、アフロディーテは最も美しい人間であるヘレネーの愛を与えることを提案しました。その提案を受けてパリスはアフロディーテを選びました。この出来事は「パリスの審判」と呼ばれています。
パリスはアフロディーテに黄金のリンゴを渡し、それと引き換えにアフロディーテはスパルタのメネラーオス王の妻であるヘレネーがパリスに恋をするようにキューピットの矢で射貫きました。そしてパリスはトロイアの王子としてスパルタを訪問し、出会った2人は恋仲となり、パリスはメネラーオス王がスパルタに不在の間にヘレネ―をスパルタから連れてトロイアに戻りました。
妻を奪われたメネラーオス王は、武将オデュッセウスや部下と一緒にトロイアに行き、ヘレネーを返すように強く交渉を行いましたが失敗し、ヘレネーを取り戻すことが出来ませんでした。そこでメネラーオス王は自分の兄でミケーネ王国の王であるアガメムノーンに相談し、オデュッセウスの誓いを元にアカイア人の連合軍を組織しトロイアに攻め入ることを決心しました。
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オデュッセウスの誓いとは?
最も美しい人間であるヘレネーには求婚者が後を絶たず、父親であるスパルタ前王のテュンダレオースは結婚相手に誰を選んでも争いになることを懸念していました。そこで武将オデュッセウスが、求婚者全員に「誰が選ばれるにせよ、選ばれた男が困難に直面した場合は、その男を皆で力を合わせて助ける」と誓わせ、争いが起きないようにしました。
トロイア戦争の開始
オデュッセウスの誓いの通りかつてヘレネーに求婚したギリシャ内の各国の王子たちが軍勢を引き連れてアウリスという港町に集結しました。アカイア人(ギリシャ人)の遠征軍は、武力に優れているミケーネ王アガメムノーンが総大将となり、ヘレネーを奪われた知力に優れているメネラーオスが副大将となりました。トロイア王国へ攻め入る際に、約1200隻の大艦隊を編成し、7万人から13万人のアカイア人が参加したと言われています。
大艦隊はエーゲ海を渡り、ダーダネルス海峡を進み、浜辺に到着しました。しかし、ギリシャ軍の預言者カルカースが、最初にトロイアの地を踏んだ者は戦死すると予言したため、皆が船から降りるのを躊躇していました。
そこでギリシャ軍のオデュッセウスが、自分の盾を地面に投げて、船から降り盾の上に降り立ちました。それを見たギリシャ軍の武将プローテシラーオスが船から飛び降りました。オデュッセウスはトロイアの地面を踏んでいないため、プローテシラーオスが最初にトロイアの地を踏んだこととなりました。
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浜辺で待ち構えていたトロイア軍とギリシャ軍が戦闘となり、数で劣るトロイア軍をプローテシラーオスなどが次々に撃破していきましたが、その前にトロイア軍の総大将ヘクトールが立ちはだかりました。プローテシラーオスが一騎打ちで戦いましたが、預言の通りプローテシラーオスはヘクトールに討ち取られ、トロイア戦争で最初のギリシャ軍の犠牲者となりました。
しかし、ギリシャ軍の英雄アキレウスなどの活躍もあり、ギリシャ軍が優勢のまま戦闘が続き、トロイア軍は浜辺から後退を余儀なくされ、堅牢な城壁を持つトロイア城内へと撤退していきました。
9年にわたる膠着状態
数に勝るギリシャ軍でしたがトロイア王国の城壁を打ち破ることが出来ず、戦争は長期化していきました。アキレウスが小隊を率いてトロイア王国周辺の同盟国などを攻め、多くを陥落させましたが、本隊のギリシャ軍はなかなか攻め込めずにトロイア王国と対峙し陣地を作っていました。両国お互いに決め手がなく、膠着状態は9年間続きました。長引く戦争により食料や資金不足になったギリシャ軍の兵士からは不満が起こり、故郷に返すように要求が強くなっていきました。また、部下が上官に反乱を起こすことも度々発生しました。そして戦いは10年目に入り、終結に向けて大きく動いて行きます。
アキレウスの怒り|最強の英雄が戦線から離脱
英雄アキレウスを主人公としたホメロスの叙事詩『イーリアス』は、トロイア戦争開始から10年目にアキレウスが激怒した出来事から始まります。
アキレウスは戦いで陥落させた都市で、ブリーセーイスという優秀な女性を捕虜として連れ帰りました。ギリシャ軍総大将のアガメムノーンもクリューセーイスという女性を気に入り捕虜として自分の側に置いていました。ある日クリューセーイスの父親の神官クリュセスより娘を返してほしいと言われましたが、アガメムノーンは全く取り合わずに申し出を拒否しました。
悲観した神官クリュセスは太陽神アポローンに祈り、アポローンの力によりギリシャ軍の兵士に伝染病が蔓延しました。そのためアキレスや他の武将から伝染病を抑えこむため神官クリュセスの依頼を聞き入れるように強い要望があり、アガメムノーンはクリューセーイスを返す約束しますが、代わりにアキレウスにブリーセーイスをもらうと言いました。そしてアキレウスは強引にブリーセーイスをアガメムノーンに奪われてしまいました。
これまでもアガメムノーンの傲慢な態度を良く思っていなかったアキレウスはこの件で激怒し、戦場に出ることをやめ、強大な英雄を欠いたギリシャ軍は不利に陥ってしまいました。
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トロイア王国の総大将ヘクトールの死|イリアスで語られる最後の話
アキレウスの離脱を受けて、一緒に参戦していたアキレウスの親友パトロクロスが、アキレウスに出陣の説得を強く行いましたが、アキレウスは首を縦に振りませんでした。そこで、パトロクロスはアキレウスの武具と軍隊を借り、ギリシャ軍を救うために出撃しました。
アキレウスの武具を見たトロイア兵はアキレウスが出陣してきたと思い動揺し、逆にギリシャ兵は士気が一気に上がりました。一時はギリシャ軍の船に火をつけ、ギリシャ軍を撤退に追い込む寸前だったトロイア軍の武将をパトロクロスは次々と撃破し、トロイアの城壁まで後退させました。
パトロクロスはトロイア城壁への攻撃を続けましたが、城壁を守っている太陽神アポローンに防がれ勢いを失って行きました。そして満身創痍となったパトロクロスは、トロイア軍の総大将のヘクトールによって討ち取られ、アキレウスの武具を奪われてしまいました。親友パトロクロスの死を知ったアキレウスは深く嘆き悲しみ、ヘクトールへ復讐することを誓います。
アキレウスは炎と鍛冶の神であるヘーパイストスより新しい武具を受け取り、戦場に戻りました。アキレウスが出撃し、ほとんどのトロイア兵は城壁の中に逃げ帰りましたが、戦と知恵の神アテーナーがトロイア軍の総大将のヘクトールの弟であるデーイポボスに姿を変え、ヘクトールに助言しました。
アテーナーが変身した自分の弟から「二人で一緒にアキレスと戦おう」と言われたヘクトールは、城門の中に入らず、アキレウスを迎え撃つことを決断します。
しかし、アキレウスが戦いを挑んで来たときにはデーイポボスは姿を消しており、1対1で決闘を行うことになってしまいました。さらにヘクトールはパトロクロスより奪ったアキレウスの武具を着ていたことにより、武具の弱点を知っているアキレウスに弱点の首元を攻撃され、倒されてしまいました。
復讐を成し遂げたアキレウスはパトロクロスの魂を慰めるために競技大会を開き、ヘクトールの遺体は父親のプリアモス王の懇願を聞き入れトロイアに返されました。パトロクロスとヘクトールの死を弔うために11日間の休戦協定が結ばれました。ホメロスのイリアスではトロイア戦争のここまでの物語が語られています。
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英雄アキレウスの死
パトロクロスとヘクトールの葬儀が終わった後、アマゾネスの女王ペンテシレイアがトロイア軍に加わり、ギリシャ軍に対して猛攻撃を仕掛けていきます。しかし、アキレウスが出撃し、ペンテシレイアを倒しました。その後、プリアモス王の義兄弟であるメムノーンがエチオピア軍を率いてトロイア軍に参加しましたが、アキレウスはこれも撃退します。
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アキレウスによって、ゼウスの子孫たちが多く倒されることとなり、ゼウスの意図通り十分に活躍したアキレウスに対して死が与えられることになってしまいました。
メムノーンを倒して勢いに乗ったアキレウスはトロイア城門前まで敵を深追いし、獅子奮迅の活躍していましたが、そこでアポローンの助けを受けたトロイア王子パリスが放った毒矢がアキレウスに命中し、その傷が原因となりアキレウスは絶命してしまいます。ちなみにパリスの放った矢はアキレウスのかかと部分に命中し、無敵の英雄アキレウスの唯一の弱点であるかかと部分はアキレス腱と呼ばれるようになりました。
アキレウスの遺体はトロイア軍とギリシャ軍双方が奪い合いましたが、ギリシャ軍のオデュッセウスと大アイアスが回収し、ギリシャ陣営に持ち帰り、アキレウスの葬式としての競技大会が開催されました。
競技大会の勝者はアキレウスの武具を与えられることになり、オデュッセウスが勝ち、アキレウスの武具を手に入れました。敗れた大アイアスは怒りにより正気を保つことが出来なくなり、自分の剣に身を投げて自殺してしまいます。
トロイア陥落の預言
ヘクトールとアキレウスという両軍の英雄が亡くなり、トロイア戦争は再び膠着状態となってしまいました。そこでトロイアを陥落させるにはヘラクレスの弓が必要という予言を聞いたオデュッセウスは、レムノス島にいるピロクテーテースを迎えに行き、ピロクテーテースをヘラクレスの弓と共にギリシャ陣営に連れてくることに成功しました。
弓の名手であるピロクテーテースは出陣するとアキレウスの仇であるパリスを弓で射って、重傷を負わせました。そして重傷を負ったパリスは回復せずに亡くなってしまいました。亡くなったことで、パリスの妻であったヘレネーを巡って、パリスの兄弟であるヘレノスとデーイポボスが争いを繰り広げました。父であるトロイア王のプリアモスがデーイポボスをヘレネーの夫として選び、ヘレノスは失意のままイーデー山に送られることになりました。
オデュッセウスは預言者カルカースよりヘレノスがトロイアを陥落させるための預言を知っていると伝えられたため、イーデー山に向かいヘレノスを捕らえました。そしてオデュッセウスがヘレノスを問い詰めたところ、自分の父や兄弟に対して怒っていたヘレノスは3つの予言を教えました。
- 1.ギリシャ神話の英雄であるペロプスの骨をトロイアに持ってくること
- 2.アキレウスの息子のネオプトレモスをトロイア戦争に参戦させること
- 3.トロイアから都市の守護神であるアテーナーの木製の像を盗み出すこと
豊穣の女神であるデーメーテールが食べたとされるペロプスの肩の骨は、ギリシャ兵の捜索により無事見つけ出すことが出来ました。ネオプトレモスはオデュッセウスが迎えに行き、父親のアキレウスの武具を譲り受けギリシャ軍に参加することになりました。
また、オデュッセウスは物乞いに変装してトロイアに侵入し、アテーナーの木像を盗みだすことに成功しました。これでヘレノスが予言したトロイア王国陥落の条件が揃うことになりました。
トロイア戦争の決着|トロイの木馬
トロイア戦争を終結させるためにオデュッセウスは最後の作戦を考え出しました。これがよく知られているトロイの木馬です。トロイア王国で神聖な動物として崇められている馬を木で作り、アテーナーの指導により巨大な木馬を完成させました。木馬には「ギリシャ軍が無事に故郷に帰れるようにアテーナーに感謝の気持ちを込めて捧げる」と刻み込みました。
木馬にはオデュッセウス率いる少数の精鋭が乗り込み、梯子を外して出入り口に蓋をし、ギリシャ軍は野営地を焼き払い近くのテネドス島まで撤退しました。トロイア兵はギリシャ軍がいなくなっている状況を見て、ついにギリシャ軍が撤退したと喜びました。残されていた木馬に関して、燃やしてしまう案、落として岩に叩きつけて壊す案、トロイアに持ち帰りアテネに捧げる案が出ました。
神官ラオコーンと王女カッサンドラはギリシャ軍の作戦だと感じ木馬を持ち帰ることに反対しましたが、ラオコーンは海から現れた毒蛇に咬まれて死んでしまい、カッサンドラはアポローンによって予言の力を授けられていましたが、同時に誰もその予言を信じないという呪いもかけられていたためカッサンドラの言葉に従う者はいませんでした。
トロイア兵たちは木馬を持ち帰ることを決め、木馬を城内に引き入れて、勝利を祝う宴会を行いました。そして深夜になったころにギリシャ兵のスパイがテネドス島で待機していた艦隊に合図をし、木馬からはオデュッセウスらが出てきて城門守衛の兵士を倒しました。
城門が開け放たれ大勢のギリシャ兵がトロイアに入り込み、宴が終わって油断して寝ていたトロイア兵を次々と倒していきました。ゼウス神殿に隠れていたプリアモス王は、アキレウスの息子ネオプトレモスによって討たれ、ヘネレーを奪われたメネラーオスがヘレネーを妻としたデーイポボスを倒しました。
こうして一晩の内に城と街は焼き尽くされほとんどのトロイア人は殺されてしまい、ギリシャ軍の大勝利によりトロイア王国は滅亡しました。この戦争によってゼウスの策略通り多くの英雄や人間が亡くなり、勝利したギリシャ軍の英雄たちも悲劇的な結末を迎えることになります。
映画「トロイ」と原作・史実との違い
トロイア戦争を題材にしたアメリカの映画『トロイ』は、ブラッド・ピットやエリック・バナ、オーランド・ブルーム、ダイアン・クルーガーといった豪華キャストが勢揃いし、興行収入約4億9千万ドルと大ヒットを飛ばしました。しかし、映画「トロイ」の内容はホメロスの叙事詩や史実といくつかの相違点があります。
- ギリシャ神話の神々は登場せず、人間同士の戦い・ドラマとして描かれる(ブラッド・ピットが演じるアキレウスも普通の人間)。
- アキレウスがトロイの木馬に乗ってトロイアを陥落させる(ホメロスの叙事詩ではアキレウスはそれ以前に戦死)。
- アキレウスが唯一の弱点である踵を射られた後、胸に矢を受けて死亡する。
- 10年も続いたとされるトロイア戦争が2週間程度で終わる。
- 神話ではメーネラオス王は自らトロイアに入城してヘレネーを取り戻すが、映画ではヘクトルに殺される。
映画では、アポロンとポセイドンは少しだけ出てきますが、基本は人間ドラマとして描かれており、神話において神々が関わる部分も置き換えられています。ホメロスの叙事詩との違いに対しては賛否両論ありますが、そもそも『イーリアス』やトロイア戦争自体、史実として検証が不十分であるため、映画「トロイ」もあくまでトロイア戦争をモチーフとしたフィクションとして楽しみましょう。
トロイア王国やトロイア戦争は実在したのか?
物語の舞台となったトロイア王国はイリオスとも呼ばれています。現在のトルコ北西部に位置し、ダーダネルス海峡の南にあります。数多くのギリシャ神話に登場する伝説上の都市でしたが、考古学者シュリーマンによる発見と、その後の考古学の研究により紀元前1300年~1190年ごろに存在したと言われています。
実際、トロイア王国と同時代に栄えたヒッタイト帝国のボアズキョイ遺跡から出土した文書に、アカイア人やイリオス、アレクサンドロス(トロイア王子パリスの別名)といった名前が記されていることが確認されています。
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トロイアは城壁に囲まれた城塞都市で、城内には高い塔が建ち、都市機構が発達していました。また王子パリスがスパルタに向かった際には豪華絢爛な船を建造するほど財力があったと言われています。
トロイア王国の城壁は、トロイア王国の王プリアモスの父であるラーオメドーンが海と地震の神ポセイドンと太陽の神アポローンに命じて作らせたと言われており、非常に強固で正面突破で攻略するのは困難でした。なお、この時にラーオメドーンがポセイドンとアポローンに城壁の報酬を支払わなかったため、疫病と海の怪物によって苦しめられることになりました。
最後の王となったプリアモスには多くの子供たちがおり、ヘクトール、パリス、デーイポボス、カッサンドラなどがイリアスに登場します。しかしプリアモス王や子供たちは全員殺されてしまいトロイア王国は滅亡してしまいました。
トロイ遺跡は世界遺産に登録され現在も見学可能
歴史的な大発見となったトロイ遺跡は世界遺産に登録されており、現在では誰でも見学可能で、人気の観光スポットになっています。かの有名なトロイの木馬は見つかっていませんが、遺跡内には巨大なレプリカが展示されています。世界遺産のトロイ遺跡|ギリシャ神話と伝説が蘇えった町 | トルコ旅行専門の人気ナンバーワン旅行会社『ターキッシュエア&トラベル』
ギリシャ軍のミケーネ王国とはどんな国?
トロイア王国に攻め込んだギリシャ連合軍の総大将を務めたアガメムノーンが治める国がミケーネ王国です。現在のギリシャのペネポネソス半島北部に位置し、考古学者シュリーマンによって遺跡が発掘されました。
伝説のトロイ遺跡を発見したシュリーマン | トルコ旅行専門の人気ナンバーワン旅行会社『ターキッシュエア&トラベル』
地中海交易により繫栄し「黄金に富むミケーネ」と呼ばれており、実際に発掘により多くの黄金の副葬品が発見されています。ミケーネからは陶芸品やワインが主に輸出され、金やガラスなどを他の地域から輸入していました。また貿易協定を結ぶことで、他国の人々を傭兵として雇い軍事力も強化していきました。
国は紀元前1500年頃から発展を遂げ、地中海の島々を含む周辺国を支配しました。ミケーネ王は強い権力を持っており、支配した周辺諸国や村々より税や農作物などを納めさせていました。ミケーネ王国では線文字Bと呼ばれる文字を持ち、優れた青銅器の技術を持っていました。また、外敵から国を守るために巨大な石を用いた城壁が発掘されています。
ギリシャ連合軍の主力としてトロイア戦争に参戦し勝利しましたが、そのすぐ後に異民族の侵攻を受けて滅んだと言われています。栄えたミケーネ文明が急に滅亡し、アテネで都市国家が成立されるまでの間は歴史的な史料が少ないため暗黒時代と呼ばれています。
イリアスに登場するトロイア戦争の人物紹介
ホメロスのイリアスや続編にあたるオデュッセイアで語られたトロイア戦争には、人間、半神半人、神などの数多くの英雄たちが登場し、その活躍が描かれています。ここではトロイア戦争の登場人物の一部をご紹介させていただきます。アキレウス(ギリシャ軍)|トロイア戦争最強の英雄
パリスの審判の舞台になった結婚式において結婚した勇猛な人間であるペーレウスとティターン族の女神ティティスの息子です。足が速く武力に非常に優れていたため、トロイア軍の敵将を多く討ち取り、ギリシャ軍の形勢を優位に導きました。しかし自身が参戦しない時はトロイア軍に形勢を逆転されてしまうほど、戦争の行方を左右するほどの絶対的な力を持っていました。
母であるティティスは、アキレウスがトロイアへの遠征に参加すれば息子が死んでしまうことを予知していたため、アキレウスに女装をさせ、スキューロス島の王の元に送りました。この時、王の娘と恋に落ち授かった子供が息子のネオプトレモスです。スキューロス島で隠れて暮らしていましたが、アキレウスを探しに来たオデュッセウスにより、変装を見抜かれてトロイア戦争に参加することになりました。
アキレスは父ペーレウスが統治していたミュルミドーン人で編成された50隻の船と共にトロイアに向かい、トロイア周辺の12都市を攻め落としました。また、トロイア軍の総大将のヘクトールを一騎討ちで倒すなど多くの功績をあげました。勇猛果敢で時には冷酷な性格ですが、ヘクトールの遺体を返してくれるように懇願してきたプリアモス王に同情し、遺体を返すなどの優しい一面もあります。
アキレウスは生まれた時に不死身の体になるように母ティティスによって冥界の川に全身を浸けられました。しかしティティスはアキレウスの足首を掴んでいたため、足首だけは不死身にならず、後にパリスの矢を足首に受けて絶命してしまいます。アキレウスはトロイア戦争の終盤まで戦い続けましたが、結局トロイア城の落城を見届けることは出来ませんでした。
オデュッセウス(ギリシャ軍)|ギリシャ軍の知将
オデュッセウスはイタケーという小さな島国の王子で、力で戦う武将ではなく、策略や知力を駆使する知将です。トロイア戦争ではアキレウスと共に多くの活躍が描かれており、イリアスの中では2大英雄として知られています。
オデュッセウスはヘレネーに求婚した婚約者の一人でした。選ばれた際に多くの敵が出ることを懸念して、「オデュッセウスの誓い」を結ばせましたが、結局オデュッセウスはヘレネーの夫として選ばれませんでした。しかし円滑にヘレネーの求婚者を決められた功績を認められ、ペネロペイアという女性と結婚することが出来ました。
オデュッセウスは、トロイア戦争に参加した場合は長期間故郷に戻ることが出来ないと言う予言を受けていたため、トロイア戦争への参加は否定的でした。しかし自ら提案した「オデュッセウスの誓い」により、参加せざるをえない状況となりました。そこで自分の精神が不安定である演技しましたが、見抜かれてしまい結局トロイアに向かうことになりました。
オデュッセウスその知力でギリシャ軍を助け、トロイの木馬作戦を考案し、トロイア戦争を終結に導きました。しかし予言の通り、故郷への帰路で様々な困難が待ち受けることになり、一緒に旅をした部下を全員失い、20年の歳月をかけてようやく故郷のイタケーに戻ることが出来ました。この物語はホメロスのオデュッセイアで語られています。
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アガメムノーン(ギリシャ軍)|ギリシャ軍の総大将
武力が高いミケーネの王でギリシャ連合軍の総大将を務めました。弟のメネラーオスの妻であるヘレネーがパリスによってトロイアに奪われたため怒り、ギリシャ諸国を集めてトロイアに攻め込むことになりました。ギリシャ連合軍を団結させた偉大な王ですが、一方で性格は傲慢で独占欲が強いため、アキレウスなど他の英雄からはよく思われておらず、周囲の人間との衝突が多くありました。トロイア出征時に逆風が吹いて船を出せなくなると、預言を受けて自分の娘を女神アルテミスへ生贄として捧げました。このことで妻であるクリュタイムネストラとの間で確執が生まれることになりました。
トロイア戦争に勝利後、プリアモス王の娘カッサンドラを連れてミケーネ王国に戻りましたが、ミケーネ到着後に妻のクリュタイムネストラと愛人によって、カッサンドラと共に暗殺されてしまいました。カッサンドラはミケーネに戻らないように預言していましたが、この言葉はアガメムノーンには届きませんでした。
メネラーオス(ギリシャ軍)|スパルタの王
政治力や知力が高いスパルタの王です。多くのヘレネーの求婚者の中から選ばれ、ヘレネーと結婚してスパルタ王の座を引き継ぎました。トロイア戦争にはヘレネーを奪ったパリスへの復讐のため兄のアガメムノーンと参戦し、多くの手柄を立てました。
戦いの初期にギリシャ軍とトロイア軍が対峙した際にパリスが出陣してきたため、メネラーオスが一騎打ちを挑みました。一騎打ちは優勢でしたが途中で邪魔が入り、パリスを討ち取ることは出来ませんでした。
トロイア陥落時はトロイの木馬に乗り込み、パリスの弟のデーイポボスを討ち取り、メネラーオスはヘレネーも殺そうとしましたが、結局殺すことが出来ずに自分の船に連れ帰りました。スパルタへの帰路で暴風雨に合い、エジプトに流れ着き、8年の歳月を経たのち帰国することが出来ました。スパルタではヘレネーと共に国を統治し幸せに暮らしました。
パトロクロス(ギリシャ軍)|英雄アキレウスの親友
アキレスの父親ペーレウスに幼少の頃から養育され、アキレウスと兄弟同然に育てられ親友となりました。アキレウスがトロイアに出征する時に一緒に参戦し共に戦いました。アキレウスが戦いをやめ陣地に留まっている時に、アキレウスの武具を借り出陣し、トロイア軍の勢いを押し返しましたが、総大将ヘクトールによって討ち取られてしまいます。親友を殺されて怒ったアキレウスが出陣し、仇であるヘクトールを倒しました。その後、パトロクロスの遺体は火葬され、葬儀のための競技会が行われました。また、彼の遺灰はアキレウスが亡くなった後に、彼の希望通りアキレウスの遺灰と一緒に埋葬されたと言われています。
大アイアス(ギリシャ軍)|英雄アキレウスに次ぐ強さを持つ英雄
大アイアスは、武力が非常に高くトロイア戦争ではギリシャ軍の主軸として多くのトロイア兵を討ち取りました。アキレウスが倒された時は、彼の遺体がトロイアに奪われないように奮闘し、敵将のアイネイアースやパリスに傷を負わせました。アキレウスの葬儀のための競技会が行われ、勝者にはアキレウスの武具が与えられることになり、大アイアスは参加しましたが、知力に長けたオデュッセウスに負けてしまいました。その結果に激怒した大アイアスは、オデュッセウスや味方の武将を殺そうと、彼らの船団に向かいました。しかし女神アテーナーが大アイアスの気を狂わせ、羊を武将に見えるようにしました。そして羊たちを切り殺した後に正気を取り戻しました。
正気を取り戻し、死んだ羊たちが横たわっている光景を見た大アイアスは自分自身に失望し、自らの剣に身を投げて自殺してしまいました。
パリス (トロイア軍)|トロイア戦争の発端とされた王子
パリスはトロイア王プリアモスと王妃ヘカベーの間に生まれた王子です。アレクサンドロスと名付けられましたが、預言者が「将来この子がトロイを滅ぼす」と伝えたため、王は大きな葛藤の中で子供を殺すように命じましたが、哀れに思った家来が殺さずに逃がしました。
パリスと名前を変え、イーダー山で牛飼いとして暮らしていましたが、ゼウスの名を受けた使者の神ヘルメスが3女神をパリスの前に連れて行き、そこで最も美しい女神を選ぶ審判を行いました。
パリスの審判の後に、トロイアで競技会が行われることを聞き、優勝の景品が自分で愛情を込めて育ててきた牛だったため、自分が優勝して牛を取り返すために競技大会に参加を決意しました。そして無事に競技大会で優勝を果たし、王と王妃の前でパリスはトロイア王国の王子であることが明かされました。予言に従い殺してしまったと思っていた王子が目の前に現れたため王と王妃は大喜びし、王子として宮殿に迎え入れました。
その後、アフロディーテの助言の通りスパルタにトロイアの王子として向かい、ヘレネーをトロイアに連れて帰りました。この事がきっかけとなりトロイア戦争が始まり、預言の通りパリスが原因でトロイア王国が滅亡してしまうこととなります。最後はギリシャ軍の武将ピロクテーテースに弓で射られて亡くなってしまいました。
ヘクトール (トロイア軍) |トロイア軍の総大将
プリアモス王の息子でトロイア軍の総大将でパリスの兄にあたります。弟にはパリスの他にデーイポボスなど多くの兄弟たちがいます。トロイア戦争の原因になったパリスに対しては、強く責任を問うことはせずに高潔な態度を貫き通しました。勇猛果敢で常に前線に立って戦い、アキレスが離脱している間はギリシャ軍を海岸まで後退させ、アキレスの親友パトロクロスを討ち取りました。しかし、友人の死で奮起したアキレスとの一騎打ちで殺されてしまいました。遺体はアキレスによって戦車に結ばれて、引き回されましたが、神の祝福を受けていたため遺体に損傷はなく、傷1つない状態でプリアモス王に引き渡され、手厚く葬られました。
ヘレネー|トロイア戦争の原因にされた美女
スパルタ王テュンダレオースと王妃レーダーの娘として生まれたと言われていますが、一説にはゼウスが白鳥に姿を変えて王妃レーダーと交わり、産ませた子供とも言われています。絶世の美女で、結婚の話が出た時はギリシャ全土から求婚者がスパルタにやってきました。スパルタとトロイアの間で人生を翻弄され、トロイア陥落の際は、元夫のメネラーオスが剣を胸に突き立て殺そうとしますが、ヘレネーのあまりの美しさに剣を落としました。
トロイア戦争後はスパルタでメネラーオスと平穏に暮らしました。
アイネイアース (トロイア軍) |ローマ建国の祖となったトロイア軍の将軍
アイネイアースは、愛と美の女神アフロディーテとトロイア王家のアンキセスの間に生まれました。トロイア王プリアモスの娘の一人と結婚し、トロイア軍総大将のヘクトールに次ぐ将軍と言われ、トロイア戦争では強大なギリシャ軍相手に奮闘しました。トロイ陥落の際に城の裏門から逃げ、その後イタリア半島に渡り、アイネイアースの遠い子孫であるロムルスとレムスの双子がローマを建国したと言われています。トロイア戦争に参戦した神々一覧
トロイア戦争には多くの神がギリシャ軍とトロイア軍をそれぞれ支援する形で参戦しています。イリアスでは神々は時に人間以上に人間らしく描かれ、神話上の神々をより身近に感じることが出来ます。トロイア戦争に参加した神々を簡単にご紹介させていただきます。
- 全知全能の至上神であるゼウスは、トロイア戦争では中立に立ち、両軍の戦力が均衡するように局面ごとに策略を巡らせました。
- 海と地震の神ポセイドンは、アポローンと共にトロイア城壁を建造しましたが、その報酬をもらえなかったためにトロイア王国を恨みギリシャ側について参戦しています。ポセイドンはトロイの木馬を策略であると見抜いたトロイアの神官ラオコーンに海蛇を放ち殺しました。
- 戦と知恵の神アテーナーは、パリスに選ばれなかった恨みからギリシャ側について戦いました。ヘクトールをだまして一騎打ちするように仕向けたり、トロイの木馬製作の指導したり、知恵をギリシャ軍に与えて助けました。
- ゼウスの妻であり結婚と出産の女神ヘーラーは、パリスが最も美しい女神に自分を選ばなかったことからパリスへの強い恨みがありギリシャ側についています。
- 炎と鍛冶の神であるヘーパイストスは、妻であるアフロディーテを憎んでいたためギリシャ側につき英雄アキレスに武具を作り与えました。
- 太陽神アポローンは、トロイ王女カッサンドラと恋人関係であるためトロイア軍に力を貸しました。自身が得意な弓矢や、伝染病でギリシャ兵を苦しめ、パリスがアキレウスを弓で射った際に力を与えました。
- 狩猟と月の女神であるアルテミスは、双子の兄アポローンに加勢するためトロイア軍に参加しました。ギリシャ軍がトロイアへ出航する際に、逆風を吹かせて邪魔をし、ギリシャ軍総大将アガメムノーンの娘を生贄に要求しました。
- 愛と美の女神アフロディーテは、パリスによって選ばれ、見返りとしてヘレネーがパリスに好意を持つように仕向けました。パリスとメネラーオスの一騎打ちの際は形勢不利のパリスを助けました。
- 戦いと破壊の神アレースは、アフロディーテと不倫関係にあり、アフロディーテと共にトロイア軍を助けました。トロイア軍の総大将ヘクトールと一緒に果敢に戦いましたが、アテーナーの助けを受けたギリシャ軍の武将ディオメデスによって撤退に追い込まれました。