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メドゥーサ(メデューサ)とは?美人姉妹が怪物になった悲劇の神話
メドゥーサ(メデューサ)とはギリシャ神話に登場する怪物で、ゴルゴン三姉妹の一人でもあります。見た者を石に変えてしまう能力を持っていることで広く知られていますが、実はもともと絶世の美女であったことをご存じでしょうか?
かわいそうな怪物メドゥーサはどのように誕生し、どのような最期を迎えたのか?ギリシャ神話で語られる悲劇の物語をわかりやすく解説します。
ギリシャ神話に登場するメドゥーサ(メデューサ)は、ゴルゴン三姉妹の三女で、「ステンノー(強い女の意味)」と「エウリュアレー(広く彷徨う女の意味)」という姉がいます。
メドゥーサという名前は「女王」を意味し、以下のような特徴を持っています。
ヘーシオドスの「神統記」などによると、ゴルゴン三姉妹の父は海神「ポルキュース」、母はポルキュースの妹「ケートー」で、ゴルゴン三姉妹の他に「グライアイ(老婆たちの意味)」と呼ばれる三姉妹もいました。
実はメドゥーサは生まれた時から怪物だったわけではありません。それどころか、メドゥーサ含めゴルゴン三姉妹はもともと美しい女性でした。
メドゥーサはポセイドンの愛人として密通を重ねますが、二人はあろうことか処女神アテーナーの神殿で交わってしまいます。アテーナーは怒り狂いますが、高位な大神であるポセイドンを罰することができなかったため、メドゥーサだけを罰します。
アテーナーの怒りにより、メドゥーサの自慢の美しい長髪は蛇となり、見る者を石化させてしまう恐ろしく醜い怪物となってしまいました。メドゥーサが怪物に変えられた理由には諸説あり、メドゥーサは美貌を自慢して女神アテーナーと競ったため、その美しさを全て奪われ怪物の姿に変えられた、とも言われています。
メドゥーサが醜い怪物に変えられたことに抗議した二人の姉ステンノーとエウリュアレーもアテーナーによって同じように怪物に変えられてしまいます。怪物となった三姉妹は、髪の毛が無数の毒蛇で猪のような牙を生やし、青銅の腕と黄金の翼を持った似たような容姿だったと言われており、目を見た者は石になってしまうという能力も共通していました。
こうした見た目や能力を恐れて、美人であった三姉妹は“恐ろしいもの”という意味を持つ「ゴルゴン」と名付けられました。
なお、見た者を石に変える能力はゴルゴン三姉妹全員ではなく、メドゥーサのみが持っていたとも言われています。本来はあまりの恐怖に「体が石のように動かなくなる」というものでしたが、次第に「石そのものに変えられる」という話に変わっていきました。
ゴルゴン三姉妹は同じ容姿・能力を持っていたとされていますが、ステンノーとエウリュアレーは不死身である一方、メドゥーサだけが不死身ではなかったため、最期はペルセウスという英雄に首を切り落とされ、命を落としてしまいます。
ダナエとペルセウスの入った木箱はゼウスの加護があったおかげで、セリーポス島の漁夫ディクテュスに助けられます。しばらくは平穏に暮らしていましたが、ダナエの美しさに、ディクテュスの兄であるセリーポス島の王ポリュデクテスが言い寄ってきました。
そしてポリュデクテスは、邪魔になるペルセウスをダナエと遠ざけるために、ゴルゴン三姉妹の一人、メドゥーサの首を取ってくるように命じます。ペルセウスは母を守るために、メドゥーサ退治に出かけることとなったのです。
メドゥーサ退治にあたり、ペルセウスは知恵の女神アテーナーから盾と兜と靴、計略の神ヘルメースからは刀、合計4つの武具が与えられました。
ニュムペーたちに歓迎されたペルセウスは無事にメドゥーサ退治に必要な道具である、金糸で織った袋「キビシス」を受け取ります。蛇の髪を持つメドゥーサの首は猛毒で、このキビシスだけがその毒に耐えることができました。
ペルセウスは準備を整え、ゴルゴン三姉妹の棲むオケアノスの流れへ向かいます。オケアノスの流れに着くとゴルゴン三姉妹は眠っていました。
ペルセウスは黄金の盾を掲げてメドゥーサの姿を見ないように近づき、眠っているメドゥーサの首を掻っ切りました。転がった首をキビシスにしまっていると、物音に気付いた二人の姉が襲ってきました。ペルセウスはすかさず兜を被り、姿を隠して、翼のついたサンダルで飛び去り無事に逃げることができました。
メドゥーサはポセイドンとの子を身ごもっていました。メドゥーサがペルセウスによって倒された際、首から出た大量の血と共に、翼を持った空駆ける天馬「ペーガソス(ペガサス)」と黄金剣を持った巨人「クリューサーオール」の双子が生まれたとされています。
伝説の生き物として知られる「ペーガソス(ペガサス)」は知っている人も多いはず。そのペガサスがメドゥーサの子だったというのは驚きですよね!ペガサスは後に、霊感の象徴とされ、星座にもなり、ローマ時代には不死の象徴ともされていました。そして中世ヨーロッパ以降は、貴族社会の紋章学では「教養」「名声」の象徴であるとされてきました。
また、ペルセウスが空を飛んでいる際、キビシスに入れていたメドゥーサの首から血が滴り落ち、海に落ちた血が赤いサンゴに、砂漠に落ちた血からはサソリなどの猛毒の生き物が生まれたと言われています。
メドゥーサ退治を無事に終えたペルセウスが空を飛んでいると、フェニキア海岸付近で岩に縛り付けられている娘を発見します。彼女はエチオピアの王女「アンドロメダ」でした。ポセイドンの怒りを買った母カシオペアのために、海の怪物ケートスの生贄にされていたのです。事情を知ったペルセウスは、手にしていたメドゥーサの首で怪物を石に変え、アンドロメダを救いました。
ペルセウスとアンドロメダは結ばれ結婚しますが、アンドロメダには元々ピーネウスという婚約者がいました。ピーネウスはペルセウスを亡き者にしようと仲間を率いて婚礼の宴に現れますが、ペルセウスはピーネウスらにメドゥーサの首を見せて石にしてしまいました。
ペルセウスはアンドロメダと結婚してセリーポス島に帰還すると、メドゥーサの首を取ってこいと命じたセリーポス島の王ポリュデクテスにメドゥーサの首を突き付けて石にし、祭壇に逃れていた母ダナエとディクテュスを助け出しました。
そして、海に流されてしまった親子を助けてくれた恩義あるディクテュスを新たな王に就けたのです。ペルセウスとアンドロメダはその後、幸せな日々を送りました。
ちなみに、セリーポス島(セリフォス島)はエーゲ海に実際にあるギリシャの島です。セリーポス島が岩だらけなのは、メドゥーサの首によるものだと言われています。
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あるとき、ギリシャのテッサリア地方にある都市ラリサの王テウタミーズは父の葬礼競技を行います。その競技に参加するためにペルセウスはラリアにやって来ましたが、そこにはアクリシオスもいました。アクリシオスがいることは知らずに、ペルセウスは競技に参加し円盤を投げます。この投げた円盤が偶然アクリシオスに当たってしまい、アクリシオスは亡くなってしまいました。
そうです、予言は現実のものとなってしまったのです。偶然とはいえ、祖父を殺めてしまったことを悔やみ、ペルセウスはアクリシオスを手厚く葬りました。
ギリシャ神話とは、古代ギリシャの諸民族に伝わった神話や伝説を、様々な伝承や挿話の要素が組み込まれるなどして出来上がった、世界の始まりや神々、英雄たちの物語です。古代ギリシャ人の標準教養として、さらには古代地中海世界での共通知識として、ギリシャ人以外にも広く知れ渡りました。
当時のギリシャ人の世界には、神話としての基本的骨格を備えた物語は存在していました。そして人々は、この地上の至るところに神々や精霊が存在し、天の彼方には偉大な神格が存在することも知っていました。しかし、それらの神々や精霊がいかなる名前を持ち、いかなる存在なのかまでは知りませんでした。
どのような神が天や大地、森に存在するかを教えていたのは吟遊詩人たちでした。神の霊が詩人の心に宿り、不死なる神々の世界の真実を伝えたりして、詩人は姿の見えない神々に関する知識を人間に解き明かす存在でした。
ギリシャ神話として知られる神々と英雄たちの物語は、紀元前15世紀頃に遡ると言われています。これらは、口承形式で伝えられてきました。口承のみで伝わっていた神話ですが、紀元前8世紀の詩人ヘーシオドスが、現存する文献の中で初めて文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を体系的にまとめ物語を伝えました。このようにして、紀元前9世紀から8世紀に「体系的なギリシャ神話」がギリシャ世界において成立したと考えられています。
ギリシャ神話は、古代の哲学思想だけでなく、キリスト教神学の成立にも大きな影響を与えました。そして、中世を通じて神話は語り伝えられ、ルネサンス期、そして近世や近代の芸術や思想においてもインスピレーションを与えていきました。
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ペルセウスがアンドロメダ救出の際に切り落としたメドゥーサの首を使って怪物を石に変えたことからわかるように、身体から離れた後もメドゥーサの首は能力を失っていませんでした。
ペルセウスはその後メドゥーサの首をアテーナーに献上しましたが、アテーナーは自身の盾「アイギス(イージス)」にメドゥーサの首をはめ込み、より優れた防具にすると、敵対する者への脅しとしたと言われています。
このようにメドゥーサの首は、敵対者を脅したり制裁として石に変えたりと、メドゥーサの死後も恐ろしいものとして使われていたこともあって、古代ギリシャでは魔除けとして広まったと言われています。
一説によると、魔除けとしてのメドゥーサの首がシルクロードを経てアジアに伝わったものが「鬼瓦」だとされています。
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トルコには「ナザールボンジュウ(Nazar boncuğu)」と呼ばれる、地中海沿岸に古くから伝わるお守りがあります。ナザールボンジュウは青いガラスに目玉が描かれたお守りで、「ナザール」はトルコ語で「災いの目」、「ボンジュウ」は「ビーズ」を意味しており、魔除けとして邪視から災いを跳ね除けると信じられています。
ナザールボンジュウの起源は諸説ありますが、メドゥーサの神話が由来となっている可能性があります。
トルコや地中海、アフリカ沿岸だとメドゥーサは女神として信仰されており、メドゥーサの目が邪視から守ってくれると伝承されています。同様の文化が古代ギリシャにも見られ、武器やアクセサリー、建物の装飾にも使われたほどでした。
ナザールボンジュウは玄関や各部屋、車の中などどこに飾ってもよいと言われており、災いを受け止めるとヒビが入ったり、割れてしまったりするとされています。トルコのお土産の定番でもあるので、どこのお土産屋さんにも置いてあります。
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後にギリシャ人の到来によって地母神としての信仰は砕かれ、メドゥーサは怪物へと転落してしまいますが、メドゥーサに対する信仰は生き続け、グレコ・ローマン時代には数多くのメドゥーサ像が各地で彫られるなどして、人々から変わらぬ信仰を受けていました。
その証拠に、地中海岸やエーゲ海岸にあるほとんどの遺跡で大小さまざまな形のメドゥーサのレリーフが見つかります。例えば、リビアの地中海沿岸にある古代ローマ遺跡レプティス・マグナのフォーラム辺りにはメドゥーサのレリーフが数多く見られますが、レプティスに限らず、古代ギリシャやローマ遺跡がたくさんあるトルコでもメドゥーサ像は多く見られます。
これらは信仰の意味もあると考えられますが、古代ではメドゥーサの顔を象った装飾が、神殿や鎧などの魔除けとして用いられたそうです。
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ヨーロッパ各地にもメドゥーサの像や絵画が多くありますが、ここでは観光で訪れることができるトルコの遺跡に残るメドゥーサのレリーフから、「何でこんなところに?」と思うような意外な場所にあるメドゥーサ像を紹介します。
トルコの有名観光地のひとつである「エフェソス遺跡」の中にある「ハドリアヌス神殿」にメドゥーサのレリーフがあります。ハドリアヌス神殿は、138年頃、エフェソス市民クインティリウスがローマ皇帝ハドリアヌスに捧げた建物で、内側は簡素ですが、正面玄関の装飾は美しく、繊細な彫刻が残っています。
二重のアーチがあり、手前のアーチの中央に女神ティケ、奥のアーチに両手を広げたメドゥーサが彫られています。メドゥーサは魔除けとして配置されました。
神殿内部の柱頭部分には建都伝説の彫刻もあり、エフェソス遺跡を訪れたならばこのハドリアヌス神殿は必見です。
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トルコ屈指のリゾート地ボドルムの近郊、「ディディム」という町には古代ギリシャの「ディディム遺跡」があります。この遺跡には「アポロン神殿」があり、古代の世界でも重要な神託所だったようです。
アポロン神殿は紆余曲折ありましたが、ローマ時代まで大いに栄えていました。後にキリスト教が広がり、4世紀に東ローマ帝国でキリスト教が国教となるに従って神殿も役目を終え、15世紀の大規模な地震により神殿のほとんどは崩れて現在の姿となりました。
ここには多くのレリーフが残っていますが、数あるレリーフの中でも特に有名なのが「メドゥーサの首」です。かつては、神殿の正面玄関の梁に飾られていて、ここでもエフェソス遺跡同様に、メドゥーサ神殿に入ってくる邪気を払う守り神として飾られていました。現在は遺跡の入口に置かれています。
イスタンブールにある観光名所の一つ「地下宮殿」には有名な「メドゥーサの頭」がありますが、ここにあるメドゥーサはエフェソス遺跡やディディム遺跡などにあるメドゥーサとは意味合いが異なります。
地下宮殿とは、ビザンチン帝国時代にアヤソフィア近くの宮殿に水を送るために造られた地下貯水池で、532年にユスティニアス1世により建設されました。地下には、奥行140m、幅70mの広大な空間が広がっており、その地下宮殿の最も奥に「メドゥーサの頭」はあります。
メドゥーサの頭は柱の土台部分にあり、髪の毛がうごめく蛇を表していることや恐ろしい形相をした顔から、メドゥーサを象ったものと考えられました。地下宮殿のメドゥーサの頭は上下逆さまや横向きになって置かれていますが、なぜその向きで置かれているかは謎となっています。
このメドゥーサの頭は、1984年の大改修で底に残された2mもの泥を取り除いた際に初めて発見されました。メドゥーサの頭は地下宮殿の見どころとなっていますので、イスタンブールを訪れた際は是非見に行ってみてはいかがですか?
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世界的にも有名なイタリアのブランド「VERSACE(ベルサーチ)」。このベルサーチのロゴはご存知でしょうか?なんと、ベルサーチのロゴにはメドゥーサが用いられています。
では、なぜメドゥーサがロゴになったのか?それは、“メドゥーサ=ベルサーチのビジョン”だからです。
メドゥーサが表現しているのは、伝統と古典的雰囲気に対するベルサーチの愛着であり、「輝き・独創性・スタイルで観客を驚かせたい」という、創業者ジャンニ・ベルサーチの強い思いです。
興味のある方は、是非ベルサーチの製品をお手に取って見てみてくださいね。
神話をモチーフにしているロゴは世界にいくつもあります。その中でも最も有名なのは、誰もが知るスターバックス。スターバックスのロゴの中央に描かれているのは、ギリシャ神話に登場する怪物「セイレーン」です。
セイレーンは、船乗りを魅了して溺れさせる海の怪物です。怪物と聞くと少し不気味でもありますが、スターバックスは「人々を魅了する」という意味でセイレーンをモチーフとしているようです。
美しかった女性が怪物の姿に変えられてしまい最期は首を切り落とされるという悲しい結末、メドゥーサはただ恐ろしいだけではなく、「ギリシャ神話の悲しき怪物」だったと言えるかもしれません。
かわいそうな怪物メドゥーサはどのように誕生し、どのような最期を迎えたのか?ギリシャ神話で語られる悲劇の物語をわかりやすく解説します。
目次
メドゥーサ(メデューサ)の神話|「かわいそう」と言われるワケ
ギリシャ神話に登場するメドゥーサ(メデューサ)は、ゴルゴン三姉妹の三女で、「ステンノー(強い女の意味)」と「エウリュアレー(広く彷徨う女の意味)」という姉がいます。
メドゥーサという名前は「女王」を意味し、以下のような特徴を持っています。
- 髪の毛が無数の毒蛇
- 猪のような牙を生やしている
- 青銅の腕と黄金の翼を持っている
- 宝石のように輝く目で、見た者を石に変えてしまう
ヘーシオドスの「神統記」などによると、ゴルゴン三姉妹の父は海神「ポルキュース」、母はポルキュースの妹「ケートー」で、ゴルゴン三姉妹の他に「グライアイ(老婆たちの意味)」と呼ばれる三姉妹もいました。
実はメドゥーサは生まれた時から怪物だったわけではありません。それどころか、メドゥーサ含めゴルゴン三姉妹はもともと美しい女性でした。
絶世の美女だったメドゥーサが怪物になった理由
メドゥーサは美しい長髪の女性で、海神「ポセイドン」が愛してしまうほどの美貌を持っていました。海神ポセイドンは最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る、ギリシャ神話の海と地震を司る神です。メドゥーサはポセイドンの愛人として密通を重ねますが、二人はあろうことか処女神アテーナーの神殿で交わってしまいます。アテーナーは怒り狂いますが、高位な大神であるポセイドンを罰することができなかったため、メドゥーサだけを罰します。
アテーナーの怒りにより、メドゥーサの自慢の美しい長髪は蛇となり、見る者を石化させてしまう恐ろしく醜い怪物となってしまいました。メドゥーサが怪物に変えられた理由には諸説あり、メドゥーサは美貌を自慢して女神アテーナーと競ったため、その美しさを全て奪われ怪物の姿に変えられた、とも言われています。
ゴルゴン三姉妹の誕生
メドゥーサが醜い怪物に変えられたことに抗議した二人の姉ステンノーとエウリュアレーもアテーナーによって同じように怪物に変えられてしまいます。怪物となった三姉妹は、髪の毛が無数の毒蛇で猪のような牙を生やし、青銅の腕と黄金の翼を持った似たような容姿だったと言われており、目を見た者は石になってしまうという能力も共通していました。
こうした見た目や能力を恐れて、美人であった三姉妹は“恐ろしいもの”という意味を持つ「ゴルゴン」と名付けられました。
なお、見た者を石に変える能力はゴルゴン三姉妹全員ではなく、メドゥーサのみが持っていたとも言われています。本来はあまりの恐怖に「体が石のように動かなくなる」というものでしたが、次第に「石そのものに変えられる」という話に変わっていきました。
ゴルゴン三姉妹は同じ容姿・能力を持っていたとされていますが、ステンノーとエウリュアレーは不死身である一方、メドゥーサだけが不死身ではなかったため、最期はペルセウスという英雄に首を切り落とされ、命を落としてしまいます。
メドゥーサ(メデューサ)を倒した英雄「ペルセウス」
ペルセウスはメドゥーサを倒して英雄となった人物です。彼はどのように生まれ、なぜメドゥーサを退治することになったのか?見る者を石にしてしまうメドゥーサをどうやって倒したのか?詳しく説明いたします。ペルセウスがメドゥーサを倒すことになった理由
ペルセウスは、主神ゼウスとアルゴス王家の娘ダナエの間に生まれました。しかし、祖父(ダナエの父)アルゴス王アクリシオスによって、ダナエと共に木箱に入れられ海に流されてしまいます。アクリシオスが「将来、お前は自分の孫に殺されるだろう」という予言を受けて怯えたためです。ダナエとペルセウスの入った木箱はゼウスの加護があったおかげで、セリーポス島の漁夫ディクテュスに助けられます。しばらくは平穏に暮らしていましたが、ダナエの美しさに、ディクテュスの兄であるセリーポス島の王ポリュデクテスが言い寄ってきました。
そしてポリュデクテスは、邪魔になるペルセウスをダナエと遠ざけるために、ゴルゴン三姉妹の一人、メドゥーサの首を取ってくるように命じます。ペルセウスは母を守るために、メドゥーサ退治に出かけることとなったのです。
メドゥーサ退治に挑んだペルセウスの装備
メドゥーサ退治にあたり、ペルセウスは知恵の女神アテーナーから盾と兜と靴、計略の神ヘルメースからは刀、合計4つの武具が与えられました。
- 黄金の盾(鏡のようにピカピカでこの盾にメドゥーサを映して見れば石にならない)
- 被ると周りに闇が立ち込め、その人間の姿を隠してしまうという兜(帽子)
- 黄金の翼のついたサンダル
- 百眼巨人アルゴスを倒した刀
ペルセウスがメドゥーサを倒した方法
まずペルセウスは、メドゥーサを退治するのに必要な道具を持っているニュムペー(精霊)たちのいる“黄昏の娘たちの園”の場所を聞き出すために、ゴルゴンの姉妹のグライアイ三姉妹と対決します。グライアイは生まれつき醜い姿で、3人で1つの眼と1本の歯しか持っていませんでした。ペルセウスはこの眼と歯を奪って、ニュムペーの居場所を聞き出しました。ニュムペーたちに歓迎されたペルセウスは無事にメドゥーサ退治に必要な道具である、金糸で織った袋「キビシス」を受け取ります。蛇の髪を持つメドゥーサの首は猛毒で、このキビシスだけがその毒に耐えることができました。
ペルセウスは準備を整え、ゴルゴン三姉妹の棲むオケアノスの流れへ向かいます。オケアノスの流れに着くとゴルゴン三姉妹は眠っていました。
ペルセウスは黄金の盾を掲げてメドゥーサの姿を見ないように近づき、眠っているメドゥーサの首を掻っ切りました。転がった首をキビシスにしまっていると、物音に気付いた二人の姉が襲ってきました。ペルセウスはすかさず兜を被り、姿を隠して、翼のついたサンダルで飛び去り無事に逃げることができました。
ペガサスはメドゥーサの子?!
メドゥーサはポセイドンとの子を身ごもっていました。メドゥーサがペルセウスによって倒された際、首から出た大量の血と共に、翼を持った空駆ける天馬「ペーガソス(ペガサス)」と黄金剣を持った巨人「クリューサーオール」の双子が生まれたとされています。
伝説の生き物として知られる「ペーガソス(ペガサス)」は知っている人も多いはず。そのペガサスがメドゥーサの子だったというのは驚きですよね!ペガサスは後に、霊感の象徴とされ、星座にもなり、ローマ時代には不死の象徴ともされていました。そして中世ヨーロッパ以降は、貴族社会の紋章学では「教養」「名声」の象徴であるとされてきました。
また、ペルセウスが空を飛んでいる際、キビシスに入れていたメドゥーサの首から血が滴り落ち、海に落ちた血が赤いサンゴに、砂漠に落ちた血からはサソリなどの猛毒の生き物が生まれたと言われています。
メドゥーサの首でアンドロメダを救う
メドゥーサ退治を無事に終えたペルセウスが空を飛んでいると、フェニキア海岸付近で岩に縛り付けられている娘を発見します。彼女はエチオピアの王女「アンドロメダ」でした。ポセイドンの怒りを買った母カシオペアのために、海の怪物ケートスの生贄にされていたのです。事情を知ったペルセウスは、手にしていたメドゥーサの首で怪物を石に変え、アンドロメダを救いました。
ペルセウスとアンドロメダは結ばれ結婚しますが、アンドロメダには元々ピーネウスという婚約者がいました。ピーネウスはペルセウスを亡き者にしようと仲間を率いて婚礼の宴に現れますが、ペルセウスはピーネウスらにメドゥーサの首を見せて石にしてしまいました。
ペルセウスはアンドロメダと結婚してセリーポス島に帰還すると、メドゥーサの首を取ってこいと命じたセリーポス島の王ポリュデクテスにメドゥーサの首を突き付けて石にし、祭壇に逃れていた母ダナエとディクテュスを助け出しました。
そして、海に流されてしまった親子を助けてくれた恩義あるディクテュスを新たな王に就けたのです。ペルセウスとアンドロメダはその後、幸せな日々を送りました。
ちなみに、セリーポス島(セリフォス島)はエーゲ海に実際にあるギリシャの島です。セリーポス島が岩だらけなのは、メドゥーサの首によるものだと言われています。
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祖父アクリシオスが受けた予言はどうなった?
ペルセウスの祖父アクリシオスが受けていた「将来、お前は自分の孫に殺されるだろう」という予言は、現実のものとなってしまったのでしょうか?あるとき、ギリシャのテッサリア地方にある都市ラリサの王テウタミーズは父の葬礼競技を行います。その競技に参加するためにペルセウスはラリアにやって来ましたが、そこにはアクリシオスもいました。アクリシオスがいることは知らずに、ペルセウスは競技に参加し円盤を投げます。この投げた円盤が偶然アクリシオスに当たってしまい、アクリシオスは亡くなってしまいました。
そうです、予言は現実のものとなってしまったのです。偶然とはいえ、祖父を殺めてしまったことを悔やみ、ペルセウスはアクリシオスを手厚く葬りました。
メドゥーサ(メデューサ)が登場するギリシャ神話とは?
ギリシャ神話とは、古代ギリシャの諸民族に伝わった神話や伝説を、様々な伝承や挿話の要素が組み込まれるなどして出来上がった、世界の始まりや神々、英雄たちの物語です。古代ギリシャ人の標準教養として、さらには古代地中海世界での共通知識として、ギリシャ人以外にも広く知れ渡りました。
当時のギリシャ人の世界には、神話としての基本的骨格を備えた物語は存在していました。そして人々は、この地上の至るところに神々や精霊が存在し、天の彼方には偉大な神格が存在することも知っていました。しかし、それらの神々や精霊がいかなる名前を持ち、いかなる存在なのかまでは知りませんでした。
どのような神が天や大地、森に存在するかを教えていたのは吟遊詩人たちでした。神の霊が詩人の心に宿り、不死なる神々の世界の真実を伝えたりして、詩人は姿の見えない神々に関する知識を人間に解き明かす存在でした。
ギリシャ神話として知られる神々と英雄たちの物語は、紀元前15世紀頃に遡ると言われています。これらは、口承形式で伝えられてきました。口承のみで伝わっていた神話ですが、紀元前8世紀の詩人ヘーシオドスが、現存する文献の中で初めて文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を体系的にまとめ物語を伝えました。このようにして、紀元前9世紀から8世紀に「体系的なギリシャ神話」がギリシャ世界において成立したと考えられています。
ギリシャ神話は、古代の哲学思想だけでなく、キリスト教神学の成立にも大きな影響を与えました。そして、中世を通じて神話は語り伝えられ、ルネサンス期、そして近世や近代の芸術や思想においてもインスピレーションを与えていきました。
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メドゥーサの首は魔除けとして広まった
ペルセウスがアンドロメダ救出の際に切り落としたメドゥーサの首を使って怪物を石に変えたことからわかるように、身体から離れた後もメドゥーサの首は能力を失っていませんでした。
ペルセウスはその後メドゥーサの首をアテーナーに献上しましたが、アテーナーは自身の盾「アイギス(イージス)」にメドゥーサの首をはめ込み、より優れた防具にすると、敵対する者への脅しとしたと言われています。
このようにメドゥーサの首は、敵対者を脅したり制裁として石に変えたりと、メドゥーサの死後も恐ろしいものとして使われていたこともあって、古代ギリシャでは魔除けとして広まったと言われています。
一説によると、魔除けとしてのメドゥーサの首がシルクロードを経てアジアに伝わったものが「鬼瓦」だとされています。
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メドゥーサの神話が起源?トルコのお守り「ナザールボンジュウ」
トルコには「ナザールボンジュウ(Nazar boncuğu)」と呼ばれる、地中海沿岸に古くから伝わるお守りがあります。ナザールボンジュウは青いガラスに目玉が描かれたお守りで、「ナザール」はトルコ語で「災いの目」、「ボンジュウ」は「ビーズ」を意味しており、魔除けとして邪視から災いを跳ね除けると信じられています。
ナザールボンジュウの起源は諸説ありますが、メドゥーサの神話が由来となっている可能性があります。
トルコや地中海、アフリカ沿岸だとメドゥーサは女神として信仰されており、メドゥーサの目が邪視から守ってくれると伝承されています。同様の文化が古代ギリシャにも見られ、武器やアクセサリー、建物の装飾にも使われたほどでした。
ナザールボンジュウは玄関や各部屋、車の中などどこに飾ってもよいと言われており、災いを受け止めるとヒビが入ったり、割れてしまったりするとされています。トルコのお土産の定番でもあるので、どこのお土産屋さんにも置いてあります。
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メドゥーサ(メデューサ)はもともと女神として信仰されていた
メドゥーサはギリシャ神話では英雄ペルセウスに退治される怪物ですが、実はギリシャ人が来る前から小アジア(現在のトルコ)にいた先住民族には地母神として幅広く信仰されていました。アナトリアとは?文明の発祥地である小アジアの歴史や遺跡 | トルコ旅行・ツアー・観光なら、安心の『ターキッシュエア&トラベル』におまかせ!
後にギリシャ人の到来によって地母神としての信仰は砕かれ、メドゥーサは怪物へと転落してしまいますが、メドゥーサに対する信仰は生き続け、グレコ・ローマン時代には数多くのメドゥーサ像が各地で彫られるなどして、人々から変わらぬ信仰を受けていました。
その証拠に、地中海岸やエーゲ海岸にあるほとんどの遺跡で大小さまざまな形のメドゥーサのレリーフが見つかります。例えば、リビアの地中海沿岸にある古代ローマ遺跡レプティス・マグナのフォーラム辺りにはメドゥーサのレリーフが数多く見られますが、レプティスに限らず、古代ギリシャやローマ遺跡がたくさんあるトルコでもメドゥーサ像は多く見られます。
これらは信仰の意味もあると考えられますが、古代ではメドゥーサの顔を象った装飾が、神殿や鎧などの魔除けとして用いられたそうです。
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ヨーロッパ各地にもメドゥーサの像や絵画が多くありますが、ここでは観光で訪れることができるトルコの遺跡に残るメドゥーサのレリーフから、「何でこんなところに?」と思うような意外な場所にあるメドゥーサ像を紹介します。
エフェソス遺跡(エフェソス)
トルコの有名観光地のひとつである「エフェソス遺跡」の中にある「ハドリアヌス神殿」にメドゥーサのレリーフがあります。ハドリアヌス神殿は、138年頃、エフェソス市民クインティリウスがローマ皇帝ハドリアヌスに捧げた建物で、内側は簡素ですが、正面玄関の装飾は美しく、繊細な彫刻が残っています。
二重のアーチがあり、手前のアーチの中央に女神ティケ、奥のアーチに両手を広げたメドゥーサが彫られています。メドゥーサは魔除けとして配置されました。
神殿内部の柱頭部分には建都伝説の彫刻もあり、エフェソス遺跡を訪れたならばこのハドリアヌス神殿は必見です。
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ディディム遺跡(ディディム)
トルコ屈指のリゾート地ボドルムの近郊、「ディディム」という町には古代ギリシャの「ディディム遺跡」があります。この遺跡には「アポロン神殿」があり、古代の世界でも重要な神託所だったようです。
アポロン神殿は紆余曲折ありましたが、ローマ時代まで大いに栄えていました。後にキリスト教が広がり、4世紀に東ローマ帝国でキリスト教が国教となるに従って神殿も役目を終え、15世紀の大規模な地震により神殿のほとんどは崩れて現在の姿となりました。
ここには多くのレリーフが残っていますが、数あるレリーフの中でも特に有名なのが「メドゥーサの首」です。かつては、神殿の正面玄関の梁に飾られていて、ここでもエフェソス遺跡同様に、メドゥーサ神殿に入ってくる邪気を払う守り神として飾られていました。現在は遺跡の入口に置かれています。
地下宮殿(イスタンブール)
イスタンブールにある観光名所の一つ「地下宮殿」には有名な「メドゥーサの頭」がありますが、ここにあるメドゥーサはエフェソス遺跡やディディム遺跡などにあるメドゥーサとは意味合いが異なります。
地下宮殿とは、ビザンチン帝国時代にアヤソフィア近くの宮殿に水を送るために造られた地下貯水池で、532年にユスティニアス1世により建設されました。地下には、奥行140m、幅70mの広大な空間が広がっており、その地下宮殿の最も奥に「メドゥーサの頭」はあります。
メドゥーサの頭は柱の土台部分にあり、髪の毛がうごめく蛇を表していることや恐ろしい形相をした顔から、メドゥーサを象ったものと考えられました。地下宮殿のメドゥーサの頭は上下逆さまや横向きになって置かれていますが、なぜその向きで置かれているかは謎となっています。
このメドゥーサの頭は、1984年の大改修で底に残された2mもの泥を取り除いた際に初めて発見されました。メドゥーサの頭は地下宮殿の見どころとなっていますので、イスタンブールを訪れた際は是非見に行ってみてはいかがですか?
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有名ブランド「VERSACE(ベルサーチ)」のロゴはメドゥーサ!
世界的にも有名なイタリアのブランド「VERSACE(ベルサーチ)」。このベルサーチのロゴはご存知でしょうか?なんと、ベルサーチのロゴにはメドゥーサが用いられています。
では、なぜメドゥーサがロゴになったのか?それは、“メドゥーサ=ベルサーチのビジョン”だからです。
メドゥーサが表現しているのは、伝統と古典的雰囲気に対するベルサーチの愛着であり、「輝き・独創性・スタイルで観客を驚かせたい」という、創業者ジャンニ・ベルサーチの強い思いです。
興味のある方は、是非ベルサーチの製品をお手に取って見てみてくださいね。
神話をモチーフにしているロゴは世界にいくつもあります。その中でも最も有名なのは、誰もが知るスターバックス。スターバックスのロゴの中央に描かれているのは、ギリシャ神話に登場する怪物「セイレーン」です。
セイレーンは、船乗りを魅了して溺れさせる海の怪物です。怪物と聞くと少し不気味でもありますが、スターバックスは「人々を魅了する」という意味でセイレーンをモチーフとしているようです。
メドゥーサ(メデューサ)はギリシャ神話の悲しき怪物
メドゥーサについて解説していきましたが、メドゥーサは単に恐ろしい怪物というだけでなく、女神としても信仰されていた側面もありました。美しかった女性が怪物の姿に変えられてしまい最期は首を切り落とされるという悲しい結末、メドゥーサはただ恐ろしいだけではなく、「ギリシャ神話の悲しき怪物」だったと言えるかもしれません。