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トルコ旅行・ツアーブログ|トルコツアー旅行記

永遠の絵画と呼ばれる伝統装飾美術「モザイク」とは?由来や技法、歴史をまとめて解説


モザイクといえば、まず思い浮かべるのはピクセル処理によって画像をぼやかす技術や、モザイクタイルなどではないでしょうか。現在はいろいろな意味で使われる「モザイク」ですが、もともとは小さなパーツで1つの絵柄を描く伝統的な美術技法を指します。それは、人類の歴史上もっとも古くもっとも美しいといわれる芸術なのです。

実は奥の深いモザイク美術について、本記事ではその技法や材料、歴史、有名な博物館などをまとめて紹介します。


モザイクとは

モザイク キリスト教
さまざまな色の小片を寄せ合わせ、絵や図形、模様を描きだす美術技法を「モザイク」といいます。建物の壁や床の内装、工芸品の装飾として古代から使われてきた技法です。小片には石やガラス、レンガ、金属、タイル、貝殻などさまざまな素材が使用されます。

象嵌(象眼)や寄木細工とは違い、はめ込むのではなく地となる面に漆喰やモルタルで貼りつけて模様を描くのが特徴です。

古代初期のモザイクには自然の小石が使われており、もともと床を補強するために造られたのが始まりでした。

モザイクの語源・由来

モザイク(英語でmosaic)という名前はどこから来たのでしょうか。

実は、ギリシャ神話の文芸・学芸を司る女神「ムーサ」の複数形「ムーサイ」が語源となっています。女神ムーサたちが語源になった理由は、中世ヨーロッパにおいてモザイク画のモチーフとして女神ムーサたちが頻繁に描かれていたからだそうです。

ちなみに、モザイクだけでなくミュージアム(博物館・美術館)やミュージック(音楽)も女神ムーサから派生した言葉です。そう聞くと、なにか神聖な感じがしてきますね。

モザイクの材料と手法


一言でモザイクと言っても、時代や目的によって材料も大きさも色も、さらには作り方も異なります。

モザイクの材料

モザイク製作においてもっとも重要となるモザイク画を描くためのピース・小片を「テッセラ」と呼びます。テッセラには石、石灰岩、砂岩、大理石、ガラス、レンガ、金属、タイル、セラミック、貝殻などさまざまな素材が使用されます。

テッセラはキューブ状になっており、1つあたりの大きさは一片数mm~3cmほどのサイズです。各時代のテッセラについて見てみましょう。

古代のテッセラ

初期のモザイクには自然の小石が使用されていました。その後、紀元前2世紀頃からヘレニズム時代のモザイクでは、カット・加工された石が使用されるようになります。

人工の洗練されたテッセラは、紀元前3世紀頃に発明されたといわれています。その結果、モザイク画がより鮮明になり、強調効果を持つようになりました。

ローマ帝国時代のテッセラ

ローマ時代には、主に大理石や石灰石を小さなキューブにカットし、テッセラとして使っていました。有名なのはイタリアのポンペイやエフェソス遺跡のモザイクです。表現的なデザインや幾何学模様が多く描かれました。

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ビザンツ帝国時代のテッセラ

ビザンツ帝国時代には、色づけされたガラスや金箔を使ったより小さなテッセラが主に使われるようになりました。金箔といってもテッセラを覆っているわけではなく、平らな2枚のガラスの間に金箔を挟んだものです。

表面のガラスに入る光の反射により、普通の金箔の色よりもよりはるかに鮮明に金色を反映する効果をもち、耐久性も高いのが特徴でした。

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現代のテッセラ

現代では、多種多様なテッセラがモザイク美術に使われています。
  • 透明ガラス: 形状と大きさが均一に製造されたガラスタイルです。溶けたガラスを型に流し込んで作られ、裏面には貼りつけやすいようにあえて溝がつけられています。
  • 陶磁器(セラミック): もっとも安価な原材料がセラミックです。多様なサイズがあるほか、素焼きのものや釉薬(ゆうやく・うわぐすり)が塗られたものなど種類もさまざまです。
  • スマルト(コバルトガラス/花紺青): 古典的なテッセラの素材がスマルトです。コバルトガラス(エナメルガラス)を粉砕して作った、不透明でありながらも綺麗なコバルトブルーが特徴です。製造された色合いと重さによって価格がつけられます。
  • 金テッセラ: 平らな2枚のガラスで金箔や銀箔を挟んだテッセラです。金箔を埋め込むために窯で2回焼き上げて作られます。
  • 鏡:モザイクに深みと輝きを加えるのが鏡です。通常、ガラスをカッティングする店から端材(はざい)として入手し、使われます。
  • ステンドグラス: ステンドグラスは、着色された不透明や半透明のガラスシートです。グラスカッターで好みの大きさに小さく切れるのが特徴です。
  • その他: 現代のモザイクアートには、彫刻された石やボトルキャップ、木材など、素材や大きさの型にとらわれないさまざまなテッセラが使用されています。

代表的な2つのモザイク技法

モザイク
モザイクは用途や時代によって、いろいろな技法が発達してきました。ここでは、なかでも代表的な2つの手法を紹介します。

直接技法

直接技法は、地となる面に小片(テッセラ)をモルタルやセメントなどの接着剤で貼りつける方法です。もっとも古い技法であり、歴史的なヨーロッパの壁や天井の装飾に使われてきました。下書きをした上にテッセラが貼りつけられるため、テッセラが外れた跡に下書きが現れることもあります。

平面はもちろん、花瓶など立体的なものの装飾にも適した技法です。接着剤で貼りつけられたテッセラの間に石膏を流し入れる方法もあります。

間接技法

間接技法では、以下2つのステップで加工されます。
  • 1. テッセラを裏返しにした状態で裏紙に水性接着剤を使って貼りつけ、デザインを完成させます
  • 2. モザイクを施す地に裏紙が表になるようセメントで貼りつけ、水で表面の裏紙を濡らしながら剥がして移します
 
表面をなめらかな平らに仕上げられるため、大きな壁画や反復模様、ベンチ、テーブルトップなどに向いています。

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世界最大を争う3つのモザイク博物館

ギリシャ・ローマ時代のモザイクは小さな石のテッセラで作られ、特に邸宅や宮殿の床、壁の装飾として大きく描かれるのが特徴でした。ヨーロッパや北アフリカ、地中海沿岸地域において、この古代ギリシャとローマのモザイクが大量に発掘されており、歴史的にも美術的にも貴重な作品の数々が博物館で展示されています。

なかでもトルコ地中海沿岸には古代ローマの重要都市が多かったため、都市遺跡から大量のモザイク作品が見つかりました。近年、世界最大級の古代モザイク博物館がオープンし、2000年前のモザイクの美しさが公開されています。

現在、古代モザイクの博物館として世界最大なのは、トルコの「ハタイ考古学博物館」(モザイク展示総面積約3,250平方m)、2位が同じくトルコの「ゼウグマ・モザイク博物館」(同2,448平方m)、3位はチュニジアの「バルドー国立博物館」(同約1,700平方m)です。

バルドー国立博物館はチュニジア国内のモザイクを収集して展示していますが、トルコの2大博物館は、当地で発掘されたモザイクのみを展示しています。

ここでは、トルコにある世界最大の2つの博物館を中心に紹介します。

世界最大のモザイク博物館!「ハタイ(アンタキヤ)考古学博物館」

考古学博物館
2014年に新装オープンした世界最大のモザイクコレクションを展示する博物館が、「ハタイ(アンタキヤ)考古学博物館」です。
 
ハタイ県の県庁所在地アンタキヤはもともと、アレキサンダー大王の武将の1人セレウコス1世が父アンティオコスを称えるため紀元前300年頃に造った古代都市のアンティオキアでした。

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アンタキヤは、セレウコス朝シリアの首都として、その後はローマのシリア州首都として、さらにビザンツ帝国、オスマン帝国の重要都市として大きく繁栄した2300年の歴史を持つ都市です。
 
そのアンタキヤを筆頭にイスケンデルンやダフネ、サマンダー(セレウキア・ピエリア)、エルズィン(エピファネイア)など周辺の遺跡から発掘された遺物が、ハタイ(アンタキヤ)考古学博物館に所蔵されています。

2~5世紀のモザイク展示をメインとしており、なかでも注目なのは以下の作品です。
  • サトゥロスとヘルマフロディトスのモザイク
  • 季節のモザイク
  • ヴィーナスの誕生のモザイク
  • アルテミスのモザイク
  • 骸骨のモザイク
 
モザイクのほかにも、世界的に有名な「ヒッタイト王シュッピリウマの像」や「女神イシュタルの小像」、ローマ時代の素晴らしい石棺など貴重な展示品が多く、見どころ盛りだくさんな博物館となっています。

名称 ハタイ・アルケオロジー・ミュゼスィ(Hatay Arkeoloji Müzesi)
住所 Maşuklu Mah.Atatürk Cad. Antakya-Hatay/Turkey
定休日 なし
全館面積 32,754平方m
展示面積 10,700平方m
モザイク展示面積 約3,250平方m
開館時間 ・夏季(4/1~10/31)08:30~19:00
・冬季(11/1~3/31)08:30~17:00
※最終入場は閉館の30分前
※砂糖祭、犠牲祭の初日は13:00より開館
入場料 40TL

世界2位!通称モザイクの都市「ゼウグマ・モザイク博物館」

ゼウグマ・モザイク博物館
トルコ南東部ガズィアンテップにあるゼウグマ遺跡において、大量のモザイク画が発見されました。ゼウグマ遺跡は、アレキサンダー大王の武将の1人セレウコス1世とその妻アパメーが、紀元前300年頃ユーフラテス川のそれぞれ対岸に造った古代都市の遺跡です。
 
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コンマゲネ王国4大都市の1つとなったあと、紀元前1年頃にローマの支配下に入り、「橋」を意味する「ゼウグマ(Zeugma)」という名になりました。ゼウグマはシルクロード上の都市として栄え、8万人の人口を抱える東ローマ最大の都市となります。

2011年にオープンした「ゼウグマ・モザイク博物館」には、ゼウグマ遺跡にあるローマ時代の別荘跡から見つかった2~6世紀の壮大なモザイクの数々が展示されています。

実は、オープン当初は世界最大のモザイク博物館だったのですが、2014年に同じくトルコ南東部のアンタキヤに改装オープンしたハタイ考古学博物館に世界最大の座を奪われてしまったため、世界第2位となったのです。
 
モザイク作品の展示数は第2位ですが、内容ではまったく負けていません。多くのモザイクはギリシャ神話がモチーフとなっており、人物や動物のフィギアも躍動感にあふれています。

なかでも、流し目で何かを訴えるような表情が印象的な「ジプシーの少女」のモザイクは、ゼウグマを代表する世界的に有名な作品です。どことなくエキゾチックで、どの角度から見ても見つめ返してくるミステリアスなモザイクとなっています。

名称 ゼウグマ・モザイク・ミュゼスィ(ZEUGMA MOZAİK MÜZESİ)
住所 Mithatpaşa Mahallesi,Hacı Sani Konukoğlu Bulvarı Tekel Caddesi,No:2 Şehitkamil, Gaziantep/Turkey
全館面積 25,000平方m
モザイク展示面積 2,448平方m
定休日 なし
開館時間 ・夏季(4/1~10/31)08:30~19:00
・冬季(11/1~3/31)08:30~17:00
※最終入場は閉館の30分前
※砂糖祭、犠牲祭の初日は13:00より開館
入場料 40TL

世界最大!ローマ時代の巨大な1枚の床モザイクもアンタキヤに!


2009年、アンタキヤの中心地においてホテルが建設されていなか、2世紀の別荘ヴィラの遺跡が見つかります。姿を現したのは、色鮮やかな2世紀頃の「ペガサスのモザイク」「3人の妖精ニンフのモザイク」「女神ムーサたちのモザイク」などです。

さらに、1点の石のモザイクとしては世界最大の1,050平方mという大きさを持つ、波打つ絨毯のように湾曲した6世紀頃の床モザイクが発見されました。この巨大なモザイクは、おそらく公共広場として使われていた場所であるとされ、波打つように湾曲している理由は526年と528年の地震による影響だとみられています。巨大なだけでなく、地震でも崩壊することなく湾曲した形で残ったという珍しいモザイクでもあります。

そのほか、5世紀の「聖霊と自然のモザイク」やローマ時代5世紀のハマムなども発掘されました。そして、発掘された考古学的美術品をそのまま保存するためにできたのが、2019年にオープンした「ネジミ・アスフルオゥル考古学博物館」です。

名称 ネジミ・アスフルオゥル考古学博物館(Necmi Asfuroğlu Arkeıloji Müzesi)
住所 Haraparası Mahallesi, Süreyya Halefoğlu Caddesi Üzeri Antakya-Hatay/Turkey
定休日 なし
開館時間 ・夏季(4/1~10/31)08:30~19:00
・冬季(11/1~3/31)08:30~17:00
※最終入場は閉館の30分前
※砂糖祭、犠牲祭の初日は13:00より開館
入場料 40TL

モザイクを眺めながら宿泊できる「ザ・ミュージアムホテル・アンタキヤ」

ネジミ・アスフルオゥル考古学博物館の上にあるのが「ザ・ミュージアムホテル・アンタキヤ」です。なんと、当初のホテル建設計画をキャンセルすることなく、モダンなミュージアムホテルへと計画変更し、遺跡を保護しながら建設されたのです。
 
世界最大のモザイクとローマ遺跡を見渡しながら宿泊できる、世界でも唯一無二といえるミュージアムホテルとして2019年にオープンしました。

全200室のシックでモダンなホテル内には、博物館のほか、5つの洗練されたレストランやバー、カフェがあります。アンタキヤ観光の拠点としておすすめのホテルです。

すぐ近くにある世界最古の洞窟教会「聖ペテロ教会」も必見です。

名称 The Museum Hotel Antakya
場所 St.Pierre Mevkii, Haraparası Mah. Hacılar Sok. No:26/1 Antakya-Hatay/Turkey
公式サイト http://www.themuseumhotelantakya.com/



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紀元前3000年までさかのぼるモザイクの歴史

モザイク
モザイクは、紀元前3000年頃から原始的な形で作られ始められたといわれています。古代ギリシャや古代ローマで発展し、壁画や床の装飾として用いられるようになりました。

その後、キリスト教の布教とともに、特に6世紀から15世紀のビザンツ帝国時代に大きく進化し、全盛期を迎えます。

古代初期のモザイク

古代メソポタミアのシュメールの町ウルクにて、紀元前3000年頃にモザイクに似た壁の装飾が造られ始めました。また、円錐形の赤粘土で作られたコーン・モザイクも見つかっています。

メソポタミアは古代文明発祥の地!メソポタミア文明の5つの特徴と歴史 | トルコ旅行専門の人気ナンバーワン旅行会社『ターキッシュエア&トラベル』
 
イランのスーサとチョガ・ザンビークでは、紀元前1500年頃のガラスのモザイクのようなものも発見されています。しかし、これらはパターン化していないため、モザイク装飾の前身とみなされています。

世界最古?ヒッタイトのモザイク

トルコ中央アナトリアのヨズガット県ウシャックル・ホユック遺跡に、紀元前18~16世紀頃のヒッタイト人の居住地跡があります。2018年、そこで3,147個の不揃いな石で造られた3×7mの原始的な幾何学模様のモザイク床が発見されました。黒青の石によって縁といくつもの三角形を描き、その間を白い石で埋め尽くした幾何学モザイクです。

異なる色の小石を使って造られた市松模様のモザイク床は、鉄器時代の遺跡でよく見つかっていました。しかし、フリュギア王国の首都ゴルディオンの城塞で見つかった紀元前9世紀のモザイクがもっとも古いものだったのです。

ウシャックル・ホユックで発見された青銅器時代のヒッタイトのモザイクは、たいへん複雑なデザインや多色で明確なパターンが当時としては非常に珍しいとされました。のちに地中海世界で発展するモザイク文化の先駆者的存在であるとされ、現在発見されているなかで世界最古のモザイクだといわれています。

ヒッタイト帝国とその首都「ハットゥシャ遺跡」の見どころ徹底解説 | トルコ旅行専門の人気ナンバーワン旅行会社『ターキッシュエア&トラベル』

古代ギリシャ・ヘレニズム・古代ローマ時代のモザイク

ベルガマ
古代ギリシャから古代ローマ時代にあたる紀元前336年~西暦476年の間、地中海沿岸一帯を中心にモザイク画が作られていました。
 
当時のモザイクは、2種類の技法でより表現が豊かになったという特徴があります。

「Opus Vermiculatum」は、ミニチュアモザイクの技法です。メインとなる絵の部分を4mm以下の小さなテッセラで詳細に描くことで、まるで絵画のように躍動感あふれる表現が可能となりました。ハイライトとしても使われています。

「Opus Tessellatum」は、4mm以上のテッセラを使用した元来の一般的な技法です。

古代ギリシャのモザイクの基本は、紀元前3世紀頃に形成されました。しかしそれより以前、ギリシャのアイギナ島マケドニア王国の宮殿と都市跡、さらにアルバニアのドゥラス(ディラキウム)にて貴重な紀元前4世紀のモザイクが見つかっています。

アレキサンダー大王の東方遠征後、ペルガモン(現ベルガマ)やアレキサンドリアなどの主要中心地にて、ギリシャ人たちは大王の功績をモザイクで表現していたのです。

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歴史上記録に残っている唯一のモザイク芸術家は、紀元前2世紀のペルガモンにいたソーサスという人物です。イタリアのティヴォリで発掘されたハドリアヌスの別荘では、彼のモザイク作品「ボウルから飲む鳩」のコピーが発見されています。

ヘレニズム時代からローマ時代にかけて、ギリシャのモザイク技術が浸透し、特に貴族や富裕層の邸宅であるヴィラの床に施されるようになりました。地中海沿岸地域を中心に北アフリカや西の大ブリテン島、東はユーフラテス川近辺まで広く普及していました。

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日本でも有名!アレキサンダー大王のモザイク

教科書などを通して日本人にもよく知られた、騎乗したアレキサンダー大王の絵は実はポンペイで見つかったローマ時代のモザイクなのです。
 
一瞬絵画のように見えますが、絵ではありません。イッソスの戦いでアレキサンダー大王とアケメネス朝ペルシャのダレイオス大王が対峙している場面を詳細に描いたモザイク画であり、紀元前120~100年頃に造られたといわれています。

モザイクの黄金期:ビザンツ帝国時代

コンスタンティヌス朝
4世紀の後半から、キリスト教の発展とともにバシリカや大聖堂に施されたモザイクは完璧なレベルに到達します。そして6~15世紀まで、ビザンツ帝国の美術の中心として黄金期を迎えました。
 
当時、特に人気だったのは金色をベースとしたモザイクです。金箔を2枚のガラスで挟んだ金色のテッセラは、神やイエス・キリストのために使われます。銀箔を使った銀色のテッセラは、その次に高い地位の重要人物を表現するために使われました。

なかでも有名なのが、首都コンスタンティノープルの大聖堂アヤソフィアやカーリエにある、たいへん美しく保存状態もよいモザイク作品です。また、ブルーモスクの裏にあるビザンツ帝国大宮殿跡からも、ユスティニアヌス帝時代にあたる565~577年頃の貴重なモザイクの床が発見されており、「大宮殿モザイク博物館」で公開されています。

キリスト教の聖堂に施されていたモザイクは、ルネッサンス期に入ると西ヨーロッパでは時間と労力を要するものとして時代遅れとみなされ、代わってフレスコ画が主流となります。しかし大きな聖堂などでは、フレスコ画よりも反射するため内部がより明るくなること、よく持続すること、豪華であったことなどから引き続きモザイクが採用されていました。

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ビザンツ時代の主流:黄金のガラスのモザイク

キリスト教の発展とともに、ビザンツ帝国でモザイク文化が開花しました。ビザンツ時代には、聖堂を厳かに、豪華に飾るため金箔や銀箔を挟んだガラスのテッセラが発達しました。黄金のガラスのモザイクによる太陽の光の反射効果を利用することで、聖堂内を明るく威厳のある空間にできたのです。

当時のガラスのモザイクのうち、特に代表的な作品がビザンツ帝国の首都であったコンスタンティノープル(現イスタンブール)に残っています。

正教会総主教であった格式高い「アヤソフィア」

アヤソフィア
537年にユスティニアヌス1世によって建設されたアヤソフィアは、大聖堂として916年間、モスクとして481年間、博物館として80年間使用されてきたビザンツ時代最高傑作の建物です。
 
聖堂内が金色に輝く厳粛な雰囲気のアヤソフィアでは、867年以降に描かれたキリスト教の聖人たちや天使たち、皇帝、皇后たちの数々のモザイクが1000年以上もの時を越え、今なお当時の輝きを失わずに人々を魅了しています。広大な内部に惜しみなく使われている金のガラス製テッセラは、なんとその数1憶5,000万個、使用されたガラスの総量は約1,000トンといわれています。

また、このテッセラはただ貼られているだけではありません。人の視線に合わせ、低い場所と高い場所で角度を変えてテッセラを貼りつけることで、光の効果を引き出す工夫がなされているのです。
 
そんなアヤソフィアで特に見逃せない代表的なモザイク作品をいくつか紹介しましょう。
  • 「聖母子」:真正面のアプスにある5mの大きさの聖母マリアと幼児キリストが描かれた、アヤソフィアの最高位といえるモザイクです。聖像破壊運動が終了したあとの867年以降に描かれたといわれています。よく見ると、聖母子ともに目線が左下の大天使ミカエルに向いていることがわかります。
  • 「大天使」:正面アプスの両端に描かれているのが、大天使ガブリエルとミカエルのモザイクです。9世紀後半に描かれたといわれています。残念ながら、現在ミカエルのモザイクはほとんど残っていません。
  • 「デイシス」:2階ギャラリーにある、ビザンティン美術の最高傑作といわれるキリストと聖母マリア、聖ヨハネが描かれた1261年頃の世界的に有名なモザイクです。横の窓からの陽光を効果的に反射させる工夫がなされており、キリストの顔が立体感をもって描かれています。
  • 「キリストと許しを請うレオーン6世」:内廊から内部へとつながる、中央のもっとも大きい皇帝専用の門の上を飾る910年頃のモザイクです。皇帝レオーン6世がキリストに許しを請う場面が描かれています。
  • 「贈呈」:アヤソフィアの南西入口門の上にある、960年頃のモザイクです。コンスタンティヌス1世がコンスタンティノープルを、ユスティニアヌス1世がアヤソフィアを聖母子に捧げている場面が描かれています。
  • 「キリスと皇帝コンスタンティノス9世と皇后ゾエ」:ギャラリー南の東の壁にある、11世紀中頃のモザイクです。左には寄付金を意味する金袋を手にした名君ヨハネス2世コムネノス、右には巻物を手にした皇后で女帝でもあったゾエが描かれています。実は、皇后ゾエは3度結婚しているため、その度に左の皇帝の顔部分が作り変えられています。最終的に、3番目の夫で皇帝のコンスタンティノス9世の姿が残ることとなりました。
  • 「聖母子と皇帝コムネノスと皇后イレーネ」:ギャラリー南の東の壁にある、1122年頃の貴重なモザイクです。左には寄付金を意味する金袋を手にした皇帝コンスタンティノス9世、右には巻物を手にした皇后イレーネが描かれています。若き皇子アレクシオスもすぐ隣の柱に描かれていますが、別に描かれた理由は彼が結核だったためともいわれています。
 
※2020年7月よりアヤソフィアはモスクに回帰したため、2階ギャラリーが立ち入り禁止となったほか、内部正面のモザイクは白い布で隠され、見えない状態となっています。

名称 アヤソフィア・モスク(Ayasofya Camii)
場所 Sultan Ahmet, Ayasofya Meydanı No:1, 34122 Fatih-İstanbul/Turkey
アクセス トラムT1線「スルタンアフメット駅」より徒歩3分(240m)
定休日 なし ※礼拝時間以外は入場可
入場料 無料

アヤソフィア・モスクを訪問する際には、以下の点に注意しましょう。
  • モスクであるため、男女ともに露出の多い格好での入場は不可。
  • 女性は頭に被るショールの着用が必須(入り口売店にて使い捨てスカーフが5TL、全身マントが20TLで購入可)。
  • 内部は土足禁止。下駄箱はあるものの、靴袋の持参を推奨。
  • 内部は写真撮影可。ただし、フラッシュ撮影は禁止。
 
アヤソフィア・ハギアソフィア大聖堂観光|2020年7月24日からは再びモスクに【世界遺産】 | トルコ旅行専門の人気ナンバーワン旅行会社『ターキッシュエア&トラベル』

モザイク美の集大成「カーリエ」

コーラ
正式名称をコーラ修道院付属救世主聖堂という「カーリエ」は、536年にユスティニアヌス1世の妃テオドラの伯父により造られたとされる、ビザンツ帝国時代の聖堂です。その後、数回にわたって再建されたのち、1321年にビザンツ帝国高官で美術を愛好する学者でもあったテオドロス・メトキテスによって大聖堂として改築されました。

聖堂内のモザイク画とフレスコ画は、1316~1321年に描かれたものです。「イエス・キリストの生涯」「聖母マリアの生涯」「イエスと39人の先祖たち」「マリアと16人の先祖たち」など、旧約聖書・新約聖書・福音書のシーンや聖人肖像画などその数は約180点にのぼり、まるで絵巻のように施されています。息をのむほど見事で詳細なモザイクたちは、ビザンツ美術の傑作です。

カーリエは、1453年にオスマン帝国がコンスタンティノープルを陥落させたあとも聖堂として残されていました。しかし、ベヤズット2世の治世であった1511年に「カーリエ・ジャーミィ」としてモスクに変えられてしまいます。モザイク美術も漆喰によって400年以上隠されていましたが、1958年に博物館として公開される際に漆喰が剥がされ、ビザンツ時代のモザイクが再び姿を現したのです。
 
※2020年8月に再度モスクに回帰することが決定し、現在モスク仕様への改修工事のため閉鎖中となっています(2022年10月現在)。

名称 カーリエ・モスク(Kariye Camii)
場所 Dervişali, Kariye Cami Sk. No:18, 34087 Fatih-İstanbul/Turkey


 
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イスラム世界でもモザイクが活躍

イスラムの世界では、モザイクのデザインパターンに数学的要素が豊富に組み込まれた複雑な幾何学模様「アラベスク」が使われるようになりました。それに伴い、キューブではなくデザインに合わせたタイルを隙間なく組み合わせるモザイクタイルの形式「ゼッリージュ」が採用されます。

ゼッリージュによる装飾は、モスクのドーム内などで見られます。

近代と現在のモザイク

20世紀以降、モザイクは現代美術の1つとして生まれ変わり、形にとらわれないアートとなりました。バルセロナのサグラダ・ファミリアで有名なガウディが手がけたグエル公園では、トカゲの噴水やテラスなど、いたるところにカラフルで立体的なモザイクが使用され、異色な世界が表現されています。

モザイクもデジタル化!人気の「フォトモザイク」

モザイク美術は日々進化しており、デジタルでも作品が作れるようになりました。

モザイク写真やモザイクアートともいわれるフォトモザイクは、コンピューターで縮小した数百枚の大量の写真をパーツとして使用し、1つの絵とするアートです。
 
携帯電話にため込んで埋もれた写真を再利用するのに最適なフォトモザイクは、最近ではアプリやオンラインで手軽に作成でき、世界に1つだけの特別な絵が作れることで人気となっています。

カレンダーやポスター、パズルなど用途はさまざまです。インパクトのあるインテリアとして、特別な人や特別な日のプレゼントとして、ぜひ一度作ってみてはいかがでしょうか。

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