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アルテミスはどんな女神?特徴と逸話、起源となった古代トルコの地母神
ギリシャ神話のメインとなるオリュンポス十二神の一柱である女神アルテミスは、処女神、狩猟の女神、月の女神と色々な面を持った女神です。
このアルテミス、実はギリシャではなくトルコ土着の女神が由来であることをご存じでしょうか?
名前は聞いたことがあっても意外と詳しくは知らない、女神アルテミスの特徴や起源、彼女に関する面白エピソードなどをここで徹底解説いたします!
ギリシャ神話の最高神ゼウスとティターン神族レトの娘であるアルテミスは、貞潔や狩猟、月の女神です。音楽・芸能・太陽の男神アポロンとは双子で、アポロンと共にオリュンポス十二神の一柱です。また、闇の女神ヘカテーや月の女神セレネ、ローマ神話のディアナと同一視されている女神でもあります。
なお、月の女神と言われる一方で、普段は山に住んで狩猟をする狩猟女神で熊などの野獣の支配者でもあり、多くの動物がアルテミスにとって神聖とされていました。また、致死性のある疫病や突然死をもたらす力や治癒の力を持っているなど、色々な力を持った女神です。
一般的にアルテミスは、弓と矢を持った長身で金髪色白の真面目な面持ちの若い女性の姿で、熊や鹿と共に表現されます。
アルテミスは古代から特にギリシャとクレタ島と北西アナトリアで熱心に信仰されると共に、トルコ西部エーゲ海沿いの古代都市エフェソスを一大中心地として信仰された女神でもありました。ちなみに、フリギア王国では地母神「キベレ」、カッパドキア地方では「マ」の名で信仰されていたようです。
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ギリシャ神話にて、最高神ゼウスが女神レトと関係を持ったことでレトが身ごもってしまうのですが、ゼウスが不貞を働いたことに嫉妬し激怒した妻ヘラが、レトに対して地上で出産することを禁じてしまいます。
レトはヘラに見つからずに出産出来る場所を見つけるために世界中を回り、最終的にエーゲ海に浮かぶデロス島のオリーブの枝の上でアルテミスを出産するのです。そして生まれて間もないアルテミスの助産によって双子の弟アポロンが誕生しました。
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通常、機敏な体で身長が高く、膝丈のチュニックを着て足にはサンダル、弓矢を持ち、足元には鹿か猟犬が従う姿で表現され、月の女神として松明を持った姿でも描かれるアルテミスは、様々な神としての特徴を持っています。
オリュンポス十二神の一柱で多才なアルテミス女神。彼女の代表的な特徴をご紹介します。
大げさなほどに処女性を厳重にしていたのは、母レトが8日間陣痛に苦しんだ末にアルテミスを産み、生まれてすぐその翌日にアルテミス自身も母レトがアポロンを産むのを助け、そのお産の苦痛を目の当たりにしてしまったことでトラウマになったからだとも言われています。
双子の弟アポロンも弓矢の名手ですが、アポロンの弓は銀製で彼の放つ矢は男性に、アルテミスの矢は金製で放つ矢は女性に、それぞれ瞬時に痛みの無い死を与えることができると言います。
トロイ戦争で有名なホメロス著『イーリアス』の中では、弓矢に加えて4頭の聖鹿が引く金の軽戦車(チャリオット)もアルテミスのシンボルとして書かれています。
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アルテミスにとって動物は神聖なものであったため、動物に危害を加えたものには罰を与えることもありました。
ギリシャ神話の中で、最高神ゼウスの愛娘アルテミスに関するエピソードは沢山存在します。そんな彼女と他の神々はどのようにかかわっていたのでしょう。アルテミスにまつわる代表的なエピソードを幾つかご紹介したいと思います。
どのエピソードでも、オリオンの死を悲しんだアルテミスがゼウスに頼んでオリオンを夜空にあげてもらい、彼は星座のオリオン座となっています。
このカリストもまた、死後ゼウスによって天に上げられて、おおぐま座となったとされます。
ヘラクレスは1年間ギリシャとトラキア地方でこの鹿を追跡し、どうにか泉で休んでいる隙に捕まえることに成功します。そしてケリュネイアを連れてミュケナイに帰る途中、偶然アルテミスとアポローンに会ってしまい、アルテミスはケリュネイアの鹿を捕らえたことに激怒しますが、ヘラクレスが功業の一つで捕らえなければならないことを話すと、アルテミスは許します。ヘラクレスは功業が終了すると、鹿をちゃんとアルテミスに返しました。
かの有名なトロイア戦争では、ギリシア艦隊がトロイアへ出航する際、総大将のアガメムノンが神聖な牡鹿を狩り、その上狩りの腕を自慢したことでアルテミスの怒りに触れ風がなくなってしまい、出港することができなくなってしまいました。
アルテミスの怒りを収める唯一の条件がアガメムノンの娘のイーピゲネイアを生贄に捧げることと告げられたアガメムノンは、トロイアに艦隊を向かわせるために泣く泣く娘を生贄に捧げ、トロイへと出港しました。
他のエピソードでは、イーピゲネイアを生贄にすることを哀れんだアルテミスは生贄を鹿に置き換え、イーピゲネイアを自身の神官として迎えたとも言われています。
双子のアポロンがトロイアの守護神であったのとアルテミス自身も西アナトリアで信仰されていこともあり、アルテミスはトロイア側についていました。そこで、ギリシア側についたヘラと対峙し、持っていた弓矢を奪われ殴られたので父ゼウスに泣きつくという弱い一面をもみせています。
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子供たちが殺されて嘆き悲しんだニオベは、故郷のリディアで岩に変えられたと言い、その言い伝えが残る“ニオベの泣き岩”が現トルコのマニサ県スピル山で現在でも見ることができます。
実は、このアルテミスはギリシャ起源ではなく、アナトリアで信仰されていた大地の母なる地母神「キベレ(キュベレー)」が起源と言われています。
古代メソポタミアのシュメール人、アナトリアのチャタルホユックの人々やフルリ人やヒッタイト人が信仰していたと言う地母神「クババ(へパ)」が、時が下ってアナトリア信仰の地母神「キベレ」になったと言います。
このアナトリアの地母神キベレは、主にフリギア王国で崇拝され、その後に西アナトリアは元よりギリシャ、その後はローマで信仰されるようになり、これがギリシャ神話に取り入れられてアルテミスとなったと言われています。ちなみにリキアではレトとして崇拝されていました。
このように、土地によって独自のアルテミス信仰文化が形成されていきますが、中でも特にエフェソスがアルテミス信仰の中心地で聖地となっていました。
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エフェソスではアナトリアの地母神キベレがアルテミスへと変化し、アルテミス神殿が建設されて熱心に崇拝されていました。
このエフェソスのアルテミスですが、驚くことにギリシャ神話のアルテミスとは特徴が全く違うのです。あの、弓矢を持ち短いチュニックを着たすっきりとした姿ではありません。
頭部にはキベレのような冠を、胸には37個の卵、あるいは乳房のようなもの(奉納された生贄の牡牛の睾丸とも言われています)を持ち、脚は段々と細くなる柱のような形をしたとても独特な姿をしています。しかもここでのアルテミスは豊穣の女神および地母神として拝められていました。
当時各地ではアルテミスを称えるお祭りが行われていましたが、エフェソスでは毎年エフェシアと呼ばれる全イオニア人が参加して“エフェソスのアルテミス”を称えるための詩のコンテストも開催されていたと言います。
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なお、1世紀には聖パウロがキリスト教布教のためエフェソスを訪れるのですが、エフェソス人達は「エフェソス人のアルテミスは偉大である!」と声高々に抗議して、エフェソスからパウロを追い払ってしまうほど、エフェソス人はアルテミスを崇拝していたようです。
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エフェソスのアルテミス神殿は、最初紀元前7世紀に造られ、その後何回も崩壊と再建が繰り返されたと言い、紀元前323年に最後に再建されたものは、アテネのパンテノン神殿のなんと4倍の大きさの神殿であったと言います。
ちなみにこの再建の際、東方遠征へ向かう途中のアレキサンダー大王から再建援助の申し出があったのですが、エフェソス人はそれを丁寧に断ったというエピソードも残っています。
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このアルテミス神殿は古代世界の七不思議の一つとされ、天に聳え立つような壮大な神殿であったようですが、262年ゴート人によって破壊された後は再建されることなく荒廃し、現在は柱と基礎部分が僅かに残っているのみとなっています。
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ちなみに、皆さんご存じのあの1960年代にNASAがおこなった人類初の月面着陸を成功させたアポロ計画の名は、アルテミスの双子の弟アポロンから付けられています。
このアルテミス、実はギリシャではなくトルコ土着の女神が由来であることをご存じでしょうか?
名前は聞いたことがあっても意外と詳しくは知らない、女神アルテミスの特徴や起源、彼女に関する面白エピソードなどをここで徹底解説いたします!
目次
アルテミスとは?
ギリシャ神話の最高神ゼウスとティターン神族レトの娘であるアルテミスは、貞潔や狩猟、月の女神です。音楽・芸能・太陽の男神アポロンとは双子で、アポロンと共にオリュンポス十二神の一柱です。また、闇の女神ヘカテーや月の女神セレネ、ローマ神話のディアナと同一視されている女神でもあります。
なお、月の女神と言われる一方で、普段は山に住んで狩猟をする狩猟女神で熊などの野獣の支配者でもあり、多くの動物がアルテミスにとって神聖とされていました。また、致死性のある疫病や突然死をもたらす力や治癒の力を持っているなど、色々な力を持った女神です。
一般的にアルテミスは、弓と矢を持った長身で金髪色白の真面目な面持ちの若い女性の姿で、熊や鹿と共に表現されます。
アルテミスは古代から特にギリシャとクレタ島と北西アナトリアで熱心に信仰されると共に、トルコ西部エーゲ海沿いの古代都市エフェソスを一大中心地として信仰された女神でもありました。ちなみに、フリギア王国では地母神「キベレ」、カッパドキア地方では「マ」の名で信仰されていたようです。
人間味満載な神々と英雄のギリシャ神話は超面白い!あらすじや伝説を紹介
アルテミスはどのように生まれたのか?
ギリシャ神話にて、最高神ゼウスが女神レトと関係を持ったことでレトが身ごもってしまうのですが、ゼウスが不貞を働いたことに嫉妬し激怒した妻ヘラが、レトに対して地上で出産することを禁じてしまいます。
レトはヘラに見つからずに出産出来る場所を見つけるために世界中を回り、最終的にエーゲ海に浮かぶデロス島のオリーブの枝の上でアルテミスを出産するのです。そして生まれて間もないアルテミスの助産によって双子の弟アポロンが誕生しました。
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アルテミスが父ゼウスに要求したこと
アルテミスはまだ3歳頃と思われる子どものときに、父であるゼウスの膝の上に座り以下のことを求めたとされています。- 永久に処女であること
- アポロンと区別するために、多くの名前を持つこと
- サイクロプス族が作った松明のように燃える弓と矢を持つこと
- 光をもたらす者であること
- 狩りができるような膝丈の短いチュニック
- 召使として同年齢の海のニンフ(妖精)60人
- 彼女が狩りを休んでいる間、狩猟犬や弓を監視する20人のニンフの召使い
- すべての山を支配すること
- 山から下りた時に滞在するための都市一つ
- 出産の痛みに苦しむ女性を助ける能力
アルテミスの特徴
通常、機敏な体で身長が高く、膝丈のチュニックを着て足にはサンダル、弓矢を持ち、足元には鹿か猟犬が従う姿で表現され、月の女神として松明を持った姿でも描かれるアルテミスは、様々な神としての特徴を持っています。
オリュンポス十二神の一柱で多才なアルテミス女神。彼女の代表的な特徴をご紹介します。
純潔を尊ぶ処女神
自分の貞潔を守ることはもちろん、他者の不貞に対しても厳しく、時には不貞を働いた女性を弓矢で撃ち殺してしまうほど徹底しています。大げさなほどに処女性を厳重にしていたのは、母レトが8日間陣痛に苦しんだ末にアルテミスを産み、生まれてすぐその翌日にアルテミス自身も母レトがアポロンを産むのを助け、そのお産の苦痛を目の当たりにしてしまったことでトラウマになったからだとも言われています。
弓矢の名手
絵画や彫刻などでは、狩猟のための短い膝丈のチュニックと弓矢を携えている姿が一般的なアルテミスの特徴です。この弓矢はときに人間に罰を与える際にも使われ、その矢は疫病をもたらすと信じられていました。双子の弟アポロンも弓矢の名手ですが、アポロンの弓は銀製で彼の放つ矢は男性に、アルテミスの矢は金製で放つ矢は女性に、それぞれ瞬時に痛みの無い死を与えることができると言います。
トロイ戦争で有名なホメロス著『イーリアス』の中では、弓矢に加えて4頭の聖鹿が引く金の軽戦車(チャリオット)もアルテミスのシンボルとして書かれています。
ホメロスとは?イリアスとオデュッセイアを生み出した偉大な吟遊詩人
自然・野生動物の守護者
自然・野生動物の守護者であり、ニンフと猟犬を伴い弓を持って山野を駆けて鹿を追うことで有名で、頻繁にアルテミスのシンボルとして表されているのが鹿です。アルテミスにとって動物は神聖なものであったため、動物に危害を加えたものには罰を与えることもありました。
アルテミスの有名なエピソード6選
ギリシャ神話の中で、最高神ゼウスの愛娘アルテミスに関するエピソードは沢山存在します。そんな彼女と他の神々はどのようにかかわっていたのでしょう。アルテミスにまつわる代表的なエピソードを幾つかご紹介したいと思います。
アルテミスとアクタイオーン
狩猟が得意なアクタイオーンは50匹の猟犬を連れて谷に狩りに出かけましたが、偶然にもその谷で水浴びをしていた裸のアルテミスを見てしまいます。たまたま裸を見られただけなのですが、貞潔を尊ぶアルテミスはアクタイオーンを牡鹿に変身させ、彼の50匹の猟犬に食い千切らせて殺させてしまいました。アルテミスとオリオン
オリオンは海神ポセイドンの息子で、アルテミスにとっては父方の従兄弟になりますが、この二人にはいくつかパターンで逸話があります。- アルテミスの狩猟仲間でもあったオリオンは、地球上の獣を全て殺すと豪語したため、ガイアによってサソリを差し向けられて殺されてしまいました。
- アルテミスが若くて格好良いオリオンに好意を抱いたことで、その貞潔が失われると危惧したアポロンがアルテミスを騙して彼女自身の手でオリオンを射殺させてしまいます。
- アルテミスはオリオンが好きでしたが、彼に触れられて貞潔が脅かされたため、オリオンを殺してしまいます。
どのエピソードでも、オリオンの死を悲しんだアルテミスがゼウスに頼んでオリオンを夜空にあげてもらい、彼は星座のオリオン座となっています。
アルテミスとカリスト
アルテミスに仕えていた美しいニンフのカリストは、姿を変えたゼウスによって妊娠させられたことで貞潔を重んじるアルテミスの怒りを買ってしまいます。そしてアルテミスはカリストを熊に変身させて追放しました。また、殺したとも言われています。このカリストもまた、死後ゼウスによって天に上げられて、おおぐま座となったとされます。
アルテミスとヘラクレス
半神半人の英雄ヘラクレスは、ある時ヘーラーに狂気を吹き込まれて自身の子を殺してしまい、その罪の償いのために“12の功業”と言われる苦難の道に出ます。この“12の功業”の中の3番目が、アルテミスの聖獣ケリュネイアの鹿を生け捕りにすることでした。ヘラクレスは1年間ギリシャとトラキア地方でこの鹿を追跡し、どうにか泉で休んでいる隙に捕まえることに成功します。そしてケリュネイアを連れてミュケナイに帰る途中、偶然アルテミスとアポローンに会ってしまい、アルテミスはケリュネイアの鹿を捕らえたことに激怒しますが、ヘラクレスが功業の一つで捕らえなければならないことを話すと、アルテミスは許します。ヘラクレスは功業が終了すると、鹿をちゃんとアルテミスに返しました。
アルテミスとトロイア戦争
かの有名なトロイア戦争では、ギリシア艦隊がトロイアへ出航する際、総大将のアガメムノンが神聖な牡鹿を狩り、その上狩りの腕を自慢したことでアルテミスの怒りに触れ風がなくなってしまい、出港することができなくなってしまいました。
アルテミスの怒りを収める唯一の条件がアガメムノンの娘のイーピゲネイアを生贄に捧げることと告げられたアガメムノンは、トロイアに艦隊を向かわせるために泣く泣く娘を生贄に捧げ、トロイへと出港しました。
他のエピソードでは、イーピゲネイアを生贄にすることを哀れんだアルテミスは生贄を鹿に置き換え、イーピゲネイアを自身の神官として迎えたとも言われています。
双子のアポロンがトロイアの守護神であったのとアルテミス自身も西アナトリアで信仰されていこともあり、アルテミスはトロイア側についていました。そこで、ギリシア側についたヘラと対峙し、持っていた弓矢を奪われ殴られたので父ゼウスに泣きつくという弱い一面をもみせています。
トロイア戦争のあらすじ解説!本当にあった?史実や映画との相違点
アルテミスとニオベ
フリギアの皇女でテーバイ王の妃であるニオベは、7人の息子と7人の娘がおりアルテミスとアポロンの二人しか子供がいないレトより勝っていると豪語します。母レトを大事にしていたアルテミスとアポロンは、レトを侮辱したニオベの子どもたちを弓矢で殺してしまいました。子供たちが殺されて嘆き悲しんだニオベは、故郷のリディアで岩に変えられたと言い、その言い伝えが残る“ニオベの泣き岩”が現トルコのマニサ県スピル山で現在でも見ることができます。
古代アナトリアでアルテミスは信仰の対象だった
実は、このアルテミスはギリシャ起源ではなく、アナトリアで信仰されていた大地の母なる地母神「キベレ(キュベレー)」が起源と言われています。
古代メソポタミアのシュメール人、アナトリアのチャタルホユックの人々やフルリ人やヒッタイト人が信仰していたと言う地母神「クババ(へパ)」が、時が下ってアナトリア信仰の地母神「キベレ」になったと言います。
このアナトリアの地母神キベレは、主にフリギア王国で崇拝され、その後に西アナトリアは元よりギリシャ、その後はローマで信仰されるようになり、これがギリシャ神話に取り入れられてアルテミスとなったと言われています。ちなみにリキアではレトとして崇拝されていました。
このように、土地によって独自のアルテミス信仰文化が形成されていきますが、中でも特にエフェソスがアルテミス信仰の中心地で聖地となっていました。
アナトリアとは?文明の発祥地である小アジアの歴史や遺跡
エフェソスのアルテミス女神
エフェソスではアナトリアの地母神キベレがアルテミスへと変化し、アルテミス神殿が建設されて熱心に崇拝されていました。
このエフェソスのアルテミスですが、驚くことにギリシャ神話のアルテミスとは特徴が全く違うのです。あの、弓矢を持ち短いチュニックを着たすっきりとした姿ではありません。
頭部にはキベレのような冠を、胸には37個の卵、あるいは乳房のようなもの(奉納された生贄の牡牛の睾丸とも言われています)を持ち、脚は段々と細くなる柱のような形をしたとても独特な姿をしています。しかもここでのアルテミスは豊穣の女神および地母神として拝められていました。
当時各地ではアルテミスを称えるお祭りが行われていましたが、エフェソスでは毎年エフェシアと呼ばれる全イオニア人が参加して“エフェソスのアルテミス”を称えるための詩のコンテストも開催されていたと言います。
エフェソス遺跡の見どころ46選
なお、1世紀には聖パウロがキリスト教布教のためエフェソスを訪れるのですが、エフェソス人達は「エフェソス人のアルテミスは偉大である!」と声高々に抗議して、エフェソスからパウロを追い払ってしまうほど、エフェソス人はアルテミスを崇拝していたようです。
意外と知らないキリスト教の基礎知識!歴史や教え、ルールなどを簡単に解説
エフェソスのアルテミス神殿
エフェソスのアルテミス神殿は、最初紀元前7世紀に造られ、その後何回も崩壊と再建が繰り返されたと言い、紀元前323年に最後に再建されたものは、アテネのパンテノン神殿のなんと4倍の大きさの神殿であったと言います。
ちなみにこの再建の際、東方遠征へ向かう途中のアレキサンダー大王から再建援助の申し出があったのですが、エフェソス人はそれを丁寧に断ったというエピソードも残っています。
世界を制した若き英雄アレクサンドロス(アレキサンダー)大王|トルコを通って東方遠征!
このアルテミス神殿は古代世界の七不思議の一つとされ、天に聳え立つような壮大な神殿であったようですが、262年ゴート人によって破壊された後は再建されることなく荒廃し、現在は柱と基礎部分が僅かに残っているのみとなっています。
名称 | アルテミス神殿(Artemis Tapnağı) |
場所 | Atatürk, Park İçi Yolu No:12, 35920 Selçuk/İzmir ※セルチュクの町中にあり、イズミールから車で約1時間 |
入場料・営業時間 | オープンミュージアムのため、入場無料で24時間見学可能です。 |
【世界七不思議】アルテミス神殿の謎とは?エフェソス屈指の見どころを解説
アルテミス合意・アルテミス計画とは?
近年アメリカが提案した有人月面探査と有人火星探査を目指す国際宇宙探査計画は、月の女神ともされるアルテミスの名にちなみ「アルテミス計画」と名付けられています。また、アルテミス計画を含んだ8か国間で国際宇宙探査に関する宣言は「アルテミス合意」と呼ばれており、この合意には日本も署名して参加しています。ちなみに、皆さんご存じのあの1960年代にNASAがおこなった人類初の月面着陸を成功させたアポロ計画の名は、アルテミスの双子の弟アポロンから付けられています。