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ホメロスとは?イリアスとオデュッセイアの多大な功績と後世への影響


ホメロス(トルコ語:Homeros、英語:Homer)は、紀元前850年頃にトルコのスミルナ(現イズミル)に住んでいた吟遊詩人です。「ホメロス」という名は古代ギリシャ語で「盲目」を意味し、イオニア地方を吟遊していた盲目の詩人であったと言われています。

ホメロスは、皆さんご存じのトロイア戦争が描かれた叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』の生みの親であり、古代ギリシャ時代の価値観や、その後の文化・芸術に多大な影響を及ぼしました。

出生地は、スミルナともキオス島ともコロフォン(現イズミル南のデーイルメンデレ)とも言われていますが、彼の生涯について詳しいことは明確に分かっていません。そもそもホメロスという人物が実在していたのかさえ未だに議論が続いているのです。

ここでは、謎に包まれたホメロスの生涯や、彼の遺した現代に至るまで語り継がれる叙事詩のあらすじ、世界史における重要性などを徹底解説します。

ホメロスの叙事詩が世界史において重要である理由

イリアス
ホメロスの代表的作品である『イリアス』と『オデュッセイア』はギリシャ文学の基礎となりました。古典時代のギリシャ文学とギリシャ神話に大きな影響を与え、それらを通してその後の西洋文学にも影響を及ぼしました。

ホメロスの叙事詩はギリシャ人に共通の価値観を提供し、英雄や貴族、宗教、人生のステレオタイプを作り出したのです。

なお、古代アナトリアとギリシャの人々は、誰もがこの二つの叙事詩を必須の教養として知っており、生きた百科事典のように基礎知識として持っていたと言います。すべての軍事、医学、技術、法律、および宗教的知識の源がこの二つの叙事詩でありました。

ホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』は、どちらも一人の主人公の活躍に焦点を当てています。『イリアス』では神のような戦士アキレス、『オデュッセイア』では狡猾なオデュッセウスです。

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ホメロスの二大英雄叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』の内容とあらすじ

『イリアス』10年間のトロイア戦争の叙事詩

トロイア戦争
イリアスは、ギリシャとトロイの間に起こった10年間に及ぶトロイア戦争の9年目の51日間、アキレウスの怒りから始まりイーリオス(トロイア)の王子ヘクトールの葬儀までを描いた叙事詩です。

トロイア戦争は、トロイアの王子であるパリスが奪い去ったスパルタ王メネラーオスの妃・ヘレネーを奪還するためにギリシャ連合軍が攻撃を仕掛けたことに端を発します。イリアスは、トロイア戦争のクライマックスをアキレウスを主人公として描いた作品と言えます。

あの有名なトロイア戦争を勝利に導いた”トロイの木馬”の話も含まれています。ちなみに、このトロイの木馬を立案しトロイ城内に忍ばせたのは、ホメロスのもう一つの大叙事詩『オデュッセイア』の主人公オデュッセウスです。また、オデュッセウス本人も木馬内に乗り込んでいました。

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イリアスは、第三者の俯瞰的な視点で記述されています。物語の舞台は主に1つの地域で、アッシリア人とトロイア人の人間対人間の争いで構成されており、対立の枠組みの中で登場人物が直面する課題を描いた壮大な物語です。イリアスでは、ゼウスやアテナ、ヘラ、ポセイドン、ヘルメスなどの神々が人間の問題に干渉したり、メッセージを伝えたり、戦いに参加したりと、積極的な役割を果たしているのが特徴です。

イリアスの舞台トロイアは実在した?トルコにあるトロイ遺跡

トロイ遺跡
『イリアス』のトロイア戦争の舞台は、トルコ北西部のチャナッカレ県にあるトロイです。
トロイ遺跡を発掘したシュリーマンは、幼少時にこの『イリアス』を読んで感動し、伝説の都市トロイの実在を信じてトロイ遺跡を掘り当てました。

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『オデュッセイア』ギリシャの英雄オデュッセウスの漂流の叙事詩

ホメロス
ホメロスのもう一つの英雄叙事詩『オデュッセイア』は、ギリシャの英雄でイタケの王オデュッセウスがトロイア戦争勝利後に、故郷のイタケに戻るまでの10年間の困難に満ちた漂流と冒険の帰路の旅が主体となり、息子のテレマコスが父オデュッセウスを探す旅や、オデュッセウス不在中に妻ペネロペへ遺産目当てで求婚した40人の男たちへの報復の話が語られています。

トロイア戦争は10年続きましたが、そこからオデュッセウスが故郷に辿り着くまでにもさらに10年間エーゲ海をさまようことになるのです。なお、現在のギリシャにはイタキ(イタケ)島という場所がありますが、これがオデュッセウスの故郷イタケと同一であるかどうかは明確には分かっていません。

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オデュッセイアは、イリアスの続編と言えますが、その性質は明確に異なります。オデュッセウスという一人の男と彼の最愛の家に戻るための壮大な旅の物語です。イリアスでは人間対人間の戦争や対立をテーマとしていた一方、オデュッセイアで主たるテーマとなるのは主人公オデュッセウスと運命や自然との闘いです。神々は物語にあまり登場せず、直接的な干渉もしません。

イリアスは登場人物の傲慢さや愚かさに彩られた悲劇ですが、オデュッセイアは、不幸に直面しながらも落ち着いた態度と賢明な判断によって無事故郷に帰り着き、家族と王国を取り戻す主人公オデュッセウスの希望の物語なのです。

また、オデュッセイアは三人称で記述されていますが、複数のキャラクターの視点から描かれているのが特徴です。第9巻から第12巻では、オデュッセウス自身が語り手となります。

余談ですが、『オデュッセイア』でオュデッセウスに手助けをするスケリア島(現ケルキラ島)の王女ナウシカ―と言う人物がいます、そう皆さんご存じの「風の谷のナウシカ」の主人公ナウシカの名は、『オデュッセイア』の登場人物が由来となっているのです。

 
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ホメロスの叙事詩の特徴

ホメロスの叙事詩は、イオニア方言で記述されています。これはホメロスがスミルナ(現在のイズミル)をはじめとするエーゲ海沿岸のイオニア地方出身だと考えられる理由となっています。

ホメロスの詩は「Dactylic hexameter(長短短六歩格)」と呼ばれる韻律で書かれています。ホメロスの作品では、一行一行がこの旋律に従っており、「神のようなアキレス」や「耐え忍ぶオデュッセウス」のように、行頭や行末に韻律の基準を満たした表現が見られます。

ホメロスの詩は、竪琴の伴奏で吟遊詩人によって歌われたと考えられますが、吟遊詩人にとっては上記のようなストックフレーズがあることで、暗記することも、その場で作曲することも簡単になります。

ホメロスの作品が後世に与えた多大な影響

ホメロスが遺した2つの叙事詩は、ギリシャの教育・文化の基礎となり、ローマ帝国の時代やキリスト教の普及に至るまで、人間教育のバックボーンを形成してきました。

『イーリアス』や『オデュッセイア』については当時の著名人も多く言及しています。例えば、「万物は流転する」という言葉で知られる自然哲学者のヘラクレイトスは、ホメロスの叙事詩に影響を受けながらも、イリアスの中で「神々と人間の間から争いがなくなればよい」としたホメロスを批判しています(ヘラクレイトスは争いや対立に一定の意義を見出していたからです)。

自然哲学者のヘラクレイトス(土:Heraklitos、英:Hērakleitos)

また、プラトンは著作『国家』の中でホメロスの詩作の魅力を認めた上で、神々や英雄の登場する叙事詩のような虚構は市民の道徳にとって有害だとして、理想の国家を成立させるために詩人追放を主張しました。

一方、プラトンの弟子であったアリストテレスは悲劇や叙事詩などを観察・分析し、文章や詩を科学的に研究する詩学の分野でも著作を残していますが、芸術としての詩を肯定的にとらえています。彼は、プラトンが批判した模倣として詩作が、教育的に人間の理解を助ける重要な役割を果たすと考えたのです。ちなみに、アリストテレスがホメロスを称賛したといわれていることから、画家のレンブラントは『ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス』という絵画を描いています(メトロポリタン美術館収蔵)。

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『イーリアス』や『オデュッセイア』と同じく叙事詩の傑作としてしられるウェルギリウスの『アエネイス』は、ホメロスの叙事詩を模倣して作られたと言われています。

さらに、ホメロスの作品は8世紀後半以降のビザンチン文化圏での復活を経て、オスマン帝国から西方に逃れたギリシャ人学者とともにイタリアへ渡り、ルネサンス文化に大きな影響を与えました。ダンテもウェルギリウスを通してホメロスの影響を受けているのです。

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その後、翻訳が盛んになり、『イーリアス』や『オデュッセイア』は現在でもヨーロッパの最も重要な古典として世界中で読み継がれているのです。

ホメロスの生涯|ヘロドトスの『ホメロス伝』

ギリシャ神話
歴史の父と言われるハリカルナッソス(現ボドルム)出身のヘロドトスが書いた『ホメロス伝』ではホメロスの生い立ちをこのように記しています。

アイオリスのキュメ出身の母クレテイスが臨月であった時、祭り見物の為にメレス川(スミルナのすぐ傍の川)の近くに来ていた際に、そこで出産してしまいます。そして生まれた子の名をメレスの子と言う意味の“メレシネゲス”と付けました。これが、後のホメロスです。

メレシネゲスはスミルナで教育を受けながら育ち、賢く才能のあった彼は成人し学塾の教師となります。その後、商業都市であったスミルナを訪れていたメンテスと言う船主に誘われ船旅へ出たのですが、この航海で訪れた場所の風物を見聞し、様々なことを書き留めていたと言います。

エトルリアとイペリアからの帰路、ギリシャのイタケ(イタキ島)に立ち寄り、ここで目を患ってしまうのです。しかし目を患いながらも、ここでオデュッセウスに関する多くの伝承を聞き知ることが出来ました。

その後スミルナの南のコロフォンに着いたとき、眼病が再発して盲目となってしまいました。

コロフォンからスミルナに帰ってからは、詩作りに専念するようになり、その後スミルナの北方のキュメ(イズミル県アリア―)へ移り住み、そこで年寄りの集まりを見つけて自作の詩を朗誦するうちに、聴衆一同は感服しメレシネゲスを慕う様になりました。

このキュメの街でメレシネゲスはキュメ方言で盲目を意味するホメロスと呼ばれるようになり、これが彼の通称となったのです。

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その後、ホメロスはポカイア(現イズミル県フォチャ)へ。ここでテストリデスと言う男が、ホメロスの詩に目を付け、身の回りの世話をする代わりにホメロスが作った詩を書写させろと言う条件を出し、ホメロスはこれを承諾します。

ホメロスは『小イリアス』や『ポカイアの歌』などの詩作をし、それをテストリデスが書写するのですが、テストリデスはホメロスの詩を自作として売り込もうとキオスへ行き、そこで大儲けをするのです。

キオスからポカイアへ来た商人から、テストリデスがキオスでホメロスの詩を自作と称して大儲けしていることを聞いたホメロスは何としてでもキオスに行こうとします。

そしてキオス島に渡り、その後そこに住み着いたホメロスは妻子を持ち、そこで『イリアス』や『オデュッセイア』など数々の詩作を行い、イオニア全土だけでなくヘラス(ギリシャ本土)まで、彼の評判が広まりました。
ホメロスは一度サモス島へ渡り、そこからアテナイへ渡ろうとし、途中のイオス島にたどり着くのですが、そこでホメロスの具合が悪くなり、病のためイオス島で亡くなったということです。

 
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ホメロス問題|ホメロスは実在したのか?

ホメロスが実在したかどうかについては、はっきりと解明されていません。ホメロスについての信頼できる文献は現状見つかっておらず、生没年や出身地すら推測でしか語れません。

ホメロスは一人の詩人ではなく、複数の作者グループだとする学説もありますが、現代では『イリアス』と『オデュッセイア』はそれぞれ一人の詩人によって作られたと考えるのが通説となっています。どちらも24冊からなる長編ですが、決して無関係な詩をつなぎ合わせたわけではなく、その複雑なプロットやキャラクター構成には一貫性があるからです。ただし、イリアスの第10巻にある「Doloneia」だけは、後に別の詩人によって挿入されたと考えられています。

一方で、『イリアス』と『オデュッセイア』は同じ作者によるものではない、とする説も主流になっています。物語の構成や特徴がそれぞれ明確に異なっているからです。いずれにしても、これらの叙事詩は完全なオリジナルではなく、古代から語り継がれてきた口頭伝承を編集したものだと考えられます。

なお、ホメロスが生きていたのは紀元前850年頃だとされていますが、トロイア戦争は紀元前1260年~紀元前1180年だと推測されているので、彼は戦争を直接見聞きして叙事詩を書いたわけではないと考えられます。

ちなみに、歴史家ヘロドトスは、ギリシャ神学がホメロスとヘシオドスによって成立したとし、彼らが自分の時代(前5世紀)より遥か前に生きていたとは思えないと言っています。

歴史学者のヘロドトス (土:Herodot、英:Herodotus)

ホメロスの叙事詩の読み方

詩としての美しさに注目!

ホメロスの叙事詩は、吟遊詩人が歌いながら語り継ぐため、六脚韻(Hexametros ヘクサメトロス)というリズミカルなフレーズで構成されています。

『エンディミオン』や『ハイペリオン』で有名な詩人ジョン・キーツも、チャップマンの翻訳でホメロスを読んだときに感動し、そのときの気持ちを詩として残しているほどです。

『イリアス』も『オデュッセウス』も複数の日本語訳が出版されていますが、比較的新しく出された松平千秋氏訳のもの(岩波文庫)が読みやすいでしょう。

こちらは散文になっていますが、詩らしいリズム感を残しつつも現代風にストーリーを楽しみやすいように工夫されています。ときには声に出しながら読むと、その魅力を一層感じられるでしょう。

ギリシャ神話について予習しておく

ギリシャ神話は元々ギリシャ周辺、トルコ、エーゲ海や地中海沿岸地域で古代より信じられていた土着の神々が元になっており、紀元前15世紀頃から口頭伝承されてきた神話です。古代ギリシャでは、宗教的な儀式から慣習、天気まで日常生活の重要な部分を説明する根拠となっていました。

ホメロスの叙事詩『イリアス』は、ギリシャ神話を題材にした最古・最初の口承神話の傑作です。全知全能の至上神ゼウスをはじめ、海と地震の神ポセイドン、戦と知恵の神アテーナー、結婚と出産の女神ヘーラー、炎と鍛冶の神ヘーパイストス、太陽神アポローン、狩猟と月の女神アルテミス、愛と美の女神アフロディーテ、戦いと破壊の神アレースなど、多くの神々が登場しますので、事前にギリシャ神話のあらすじなどを知っておくと理解が深まります。

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現在の地図を見ながらイメージを膨らませる



トロイア戦争の舞台となったのは現在のトルコ共和国あたりで、トロイア王国があったとされるトロイ遺跡もトルコのチャナッカレにあります。

例えば、アカイア人によるギリシャ連合軍は10万人以上で大船団を編成してエーゲ海を渡り、ダーダネルス海峡から上陸してトロイア両軍が激突した、という『イリアス』の場面や、『オデュッセイア』におけるオデュッセウスの旅路などを地図で確認しながら読めば、臨場感を持って楽しめます。

Google Earthを使えば、ちょっとした旅行気分を味わえますし、事前に地理と併せて物語を楽しんでおけば、実際にトルコやギリシャの地に旅行に行ったときの感動もひとしおでしょう。

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ドラクエ11の登場人物ホメロスとの関連性は?

『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』では、ホメロスというキャラクターが登場します。 吟遊詩人のホメロスが名前の由来になっているのではないかと言われていますが、長い金髪で白い鎧を着たデルカダール王国の将軍という設定で、特にホメロスにインスパイアされた点は見受けられません。ちなみに、インターナショナル版ではホメロスではなく、「Jasper(ジャスパー)」となっています。

なお、ホメロス(ὅμηρος/hómēros)という名前の語源はギリシャ語の「人質」(または「保証人」)であるとする説がありますが、ドラクエ11のホメロスは主人公の仲間を人質にとって敵対するというシーンがあります。

 
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